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カテゴリー「The Band」の18件の記事

2014.09.11

ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ第11集はベースメント・テープス集

●リリースされるのは、Complete というタイトルの6CD138曲収録の完全盤と、Raw というタイトルの2CD38曲収録の抜粋盤の2種類。

The Basement Tapes Complete: The Bootleg Series Vol. 11
The Basement Tapes Complete: The Bootleg Series Vol. 11

 ディラン・ファンには有名な、バイク事故後の隠遁期のザ・バンドとのセッション音源。75年に The Basement Tapes という2枚組で公式にリリースされたものですが、それに先立って、ロック史上初のブートレッグ、Great White Wonder で世に出た音源です。

●公式ソースでは、

・ガース・ハドソンが、資料研究をしてるジャン・ハーストという人との共同作業でテープを修復
・新たに発見された、Red Room と呼ばれるディランの自宅の部屋で録音された音源を収録
・Garth Hudson's numbering system によって実際の録音順に収録

ということが発表されてます。

 また、1975年に公式盤 The Basement Tapes として発表されたときの加工された音ではなく、「1967年の夏」に実際に演奏、録音された時の音に近づけているとされていますが、先行で公開された Odds and Ends の音はブートレッグで聴ける、ヴォーカルが片チャンネルに寄った左右チャンネルに分離した音ではなく、ヴォーカルがセンターに定位した調整された音になってます。

●リヴォンの自伝によれば、彼がウッドストックで他のメンバーに合流したのは1967年の終わり頃(それ以前の録音にリヴォンは不参加。ドラムを叩いているのはリチャード・マニュエルですが、ドラムレスの録音も少なくないです)。その後も録音はもちろん続いたので、ベースメント・テープスの音源は今回のリリース情報にある「1967年の夏」だけではなく、67年から68年にかけてまたがってるはずです。

 データ等の詳細はブックレットで明らかになるはずなので楽しみです。収録順を決める基準になった Garth Hudson's numbering system というものがどんなものなのかは不明ですが、リヴォンの伝記には「あのとき何曲が録音されたのか、正確な数字を知っているのはガースだけだ」と書かれているので、ガースは後から辿れるようなデータ記録を残していたのかもしれません。

●90年代に入ってから大量に非公式に流出し始めて、100曲以上の曲が聴けるようになっているベースメント・テープス音源ですが、マスターを持っていたというガースは以前、自分は音源の流出には関与していないと語ってました。マスターのコピーを持っていたと思われるボブのマネージャーだったアルバート・グロスマンがなくなったのが1986年なので、音源はグロスマンの死去後のグロスマンの周辺から漏れたと考えるのが自然なんでしょう(ただの推測です)。

 ちなみに。75年リリースの公式盤と今回の収録曲を突き合わせると、75年盤の収録曲は今回のディスクの3、4枚目に集中しています。2トラックのレコーダーで録音された音質はピンキリ。先行公開の Odds and Ends はもちろん「ピン」の方です。

●11月4日発売。国内盤は11月19日予定。

2013.09.30

ザ・バンド、Live at the Academy Of Music 1971 を聴く

●1972年にリリースされたザ・バンドのライブ・アルバムの名盤 Rock Of Ages の再発版です。

Live at the Academy
Live at the Academy

 ただし。下で述べるように単なる増補版再発などではなく、内容的には新プロダクションです。自分の Rock Of Ages 歴は、アナログ、CD3種、ブート1種に、今回のボックスなので、6個目。長い旅なので、この分章も長くなりそう・・・

Reel●9月27日付のテレグラフ紙に載ったロビー・ロバートソンのインタビューによると、今回のプロダクションのきっかけはレコード会社からの持ちかけで、長年行方不明だった Rock Of Ages(以下、ROA)のマスターが見つかったので何かできないか、という誘いから始まったということです。今回のブックレットにマルチトラックのリールの写真が載ってますが(左写真)、見つかったマスターの写真と思われます。

 インタビューでは、旧ROAのミキシングについても語っていて、当時、マイアミでフィル・レッシュ(原文ママ。たぶんラモーンの間違え)とミキシング作業後、NYに戻り聴き直したものの2人とも満足できず。ラモーンは他の仕事があったため、ロビーがウッドストックの未完成状態のスタジオで作業。マイアミでのミックスよりは良かったものの満足はできなかったとういことです。

Rock_of_ages_2●最初にリリース情報の概略を読んだ時は、重複の多い内容でどれだけ楽しめるのかなと思ったのですが、具体的な内容が分かり、実際に聴いてみると、当初の感想は一変。私的には、内容も音質も旧 ROA (左写真) とは完全に別物という印象を受けました。もちろん未発表トラックを追加してリリースされた2001年の拡大版とも違います。単なる音質改良盤というには、得られるものが多すぎます。

●まず、Disc1と2のボブ・クリアマウンテンがミックスした音源から。

 こちらは複数日の音源の抜粋で、旧ROAと同じテイクを使ってますが、曲順はまったく変わってます。1曲目が歓声の前触れもなしに The W.S. Walcott. Medecine Show でいきなり始まるので、旧ROAの、ロビーのホーン紹介のイントロダクションに続いて、リック・ダンコの印象的なベースから始まる Don't Do It によるオープニングに慣れた人は、「こんなの Rock of Ages じゃない」と思うかもしれません。

●肝心のボブ・クリアマウンテンのミックスですが(以下、BCミックス)、自分は旧ROAとのあまりの違いに驚き、感激しました。

 旧ROAでは、ヴォーカル、ベース、ドラムが中央にモノラル状に定位してるので、音が団子状に固まって聴こえます。しかも、あの、中低音に寄ったモヤっとした音。そういうズシンと重いダウン・トゥ・アースなサウンドこそザ・バンドだ、と思う人もいるでしょう。ここでも、「こんなの Rock of Ages じゃない」言われるかも。

●今回のBCミックスを聴いて驚いたのは、各メンバーが何をしてるか、よく分かるなということ。特にヴォーカル。

 各人のヴォーカルを左右chに振り分けたり、音の定位をずらしているので、このバンドの3人の傑出したリード・ヴォーカルが対旋律でどんな歌を歌ってるか、どんなタイミングでバック・ヴォーカルを被せてくるかが、かなりはっきり分かるようになりました。音が鮮明なので微妙な声のニュアンスの違いも際立ちます。そこだけに集中して、解剖的に聴き続けてもかなり面白いと思います。

 例えば、I Shall Be Released (これは2001年の拡大版で初出でした)。マニュエルのヴォーカルが中央、左右にそれぞれダンコ、ヘルムのヴォーカルを振り分け。オルガン、ベースは中央、左にピアノ、右にギターと綺麗に分けられているので、すべての音が細やかに聴き取れます。

 こういう面白さは、ヴォーカルが多層的に重なり合う曲で際立ちます。This Wheel's On Fire はA・B・Cというシンプルな構成の曲ですが、曲が進むに連れて、B(マニュエル)・C(ヘルム)とヴォーカルが増えていく面白さとか(旧ROAではヴォーカルがすべて中央で団子状に聴こえ、B部分のマニュエルのヴォーカルはほとんど聞こえません。というか、旧版ではB部分のマニュエルのボーカルはカットされてませんか?)。あるいは、King Harvest 冒頭のマニュエル/ヘルムの二重ヴォーカルが対等に聴こえる面白さとか。Rockin' Chair のコーラス部でのヴォーカルの複雑な重なりはホント感動的で、ジーンと来ます。と、書いてたらきりがないです。

●楽器音ではロビーのギターが、目立つようなオブリガートやソロ以外の箇所でも、はっきり聴こえる箇所が増えました(The Weight 全編で良く聴こえるギターなんてすごく面白いです)。全体のサウンドに埋もれがちで聴きにくかったマニュエルのピアノもそう。

 楽器音で一番驚いたのが、ガースが Chest Fever の前で弾く The Genetic Method というタイトルの即興的なソロ。旧ROAのもやっとした感じが取れて、高音域の鮮やかなオルガンの音色は驚きです。ガースは複数の楽器(あるいは、二段の鍵盤)を弾いてますが、両手の音を(旧ROA以上にはっきりと)左右chに振り分けているので、両手の弾き分けの違いが際立ってとても面白いです。

 ちなみに、途中「蛍の光」を弾く The Genetic Method は当然大晦日31日の音源ですが、そこから切れ目なしになだれ込んで始まる Chest Fever は28日の音源なんですね。disc4では31日の音源がきけますが、演奏終了後にメンバーの Thank You, Happy New Year! という声が聞け新年ムード満点なんですが。演奏にキズがあるわけでもないのに、なぜ、わざわざ28日の音源を繋いだのでしょう。

 もう一つのメドレーぽい箇所は、The Night They Old Dixie Down / Across The Great Divide ですが、これも実は前者が29日、後者が30日の演奏でした。うーん、繋がりが自然にスムーズなのでとても別日の演奏とは思えません(それは旧ROAで聴いてもそうです)。

●ボブ・クリアマウンテンが仕事をしてきたミュージシャン達は自分の好みとずれているのですが、驚いたのが少し前に始まった一連のストーンズのライブ・アーカイブ配信。特に73年ブリュッセル公演の音源。いったいどうすれば、こんな鮮やかなサウンドに生まれ変わるのか仰天したものですが、今回のザ・バンド音源での仕事ぶりも同様の印象を持ちました。ザ・バンドの音楽にしては派手にし過ぎてしまうのではないの、という先入観は私的には完全に外れ。脱帽です。

 不満を言えば、曲間が短めに端折られていて、どんどん次の曲に進んでいくので各曲の印象に浸っている余裕がないこと。ディランが登場する Down In THe Flood ですら、前の曲から間を置かずあっさりすぐ始まります。Like A Rolling Stone の前にボブが「この曲やるの何年ぶりだっけ。6年ぶり?16年ぶり?」と語る面白いmcはちゃんと残ってます。ボブは途中、歌詞忘れかけてヨレヨレになりますけど。あんたがその曲で歌詞忘れてどうする(笑)。

●続いて、31日のNew Year's Eveショーの音源を無編集で演奏中に収録したdisc3と4。

 16テイクと大量の音源が初出で、ミックス担当はロビーの息子のセバスチャン・ロバートソンとジェアド・レヴァインという人(後者はロビーがドリームワークスの仕事をした時に一緒に仕事をした人の模様)。BCミックスとは微妙に違いますが、こちらもとても聴きやすいです。あまりいじくってない感じの音。ホーンは引っ込み気味。

 驚いたのが曲順。上に書いたように旧ROAでは、ロビー・ロバートソンのホーン隊紹介に続いて、Don't Do It のイントロが始まるので、ホーン隊はコンサートの最初からいるものと、大昔、最初にROAを聞いた時から今まで思いこんでました。

 ところが、この31日の演奏では、ホーンが登場するのはdisc4の1曲め Life Is A Carnival から。disc3にホーンが参加してるものは1曲もありません。ようするにホーンの4人はコンサートの途中から出演してたわけです。Stage Fright 演奏後の、ダンコの「ここでちょっと休憩とってまた戻ります」というmcからもショーが2部構成だったことが分かります。31日だけではなく4日間すべてそうだったのではないでしょうか。

 旧ROAでの冒頭のロビーのイントロダクションは We're gonna try something we've never done before. ですが、今回の31日音源で Life Is A Carnival の前で話してるのは We're gonna do something different this second half. とホーンが途中から入ることを裏付けてます。this second half という言葉のある31日のmcを使うとホーンが最初からいるように「偽装」できなくなるので、旧ROAでは、this second half という言葉を話していない別日のmcを使ったということなのでしょう。

 力尽きて来たのでもうあまり書けませんが、曲間も含め無編集ということなのでコンサートの進行具合も分かって面白いです。個人的には Unfaithful Servant のロビーのソロを別テイクで聴いてみたかったのですが、旧ROAのテイクも31日のテイクだったので、残念ながら同じものしか聴けません。

●DVDに収録された映像は King Harvest と The W.S. Walcott. Medecine Show 2曲だけですが、動く演奏シーンを見るのはやはり格別。The W.S. Walcott. Medecine Show のイントロ部でロビーがギターのネックを派手に上下させながらリフを弾くシーンとか、「オー!」って感じ。こればかりは音だけでは分かりません。

 これで、映像で見れるものは、2005年に出たアンソロジー・ボックスに収録の Don't Do It と合わせて3曲になりましたが、まだ未公開の映像もあるようで、こちらでそれをまとめてくれてる方がいます。

 Rag Mama Rag のチューバ・ソロでハワード・ジョンソンがステージ前方に出て立って演奏してるシーンとか、こういうのも当たり前ですが音だけでは分かりません。不完全な断片しかなくても十分なので、今回のDVDに入れて欲しかったです。

●ブックレットのロビーの回想は具体的でとても面白いもの。NYの空港に到着したアラン・トゥーサンが持参したホーン用の譜面の入ったカバンを誰かが間違って持って行ってしまった話とか(つまり書き直し)、着いたウッドストックは大雪で、アランの耳の具合が悪くなったりで順調には作業は進まなかったとのこと。コンサート2日前から行ったリハーサルの多くはホーンとの調整に費やされたそうで、ジョン・サイモンも手助け。コンサートの現場にはボビー・チャールズやDr.ジョンもいたそうです。

 他に3者のエッセイが載ってますが、マムフォード・アンド・サンズの部分はわりと儀礼的な内容であまり面白みはありません。その点、アラン・トゥーサンのエッセイは流石。トゥーサンは、リック・ダンコのベースをどの流派にも分類できない独自のスタイルを持ってると述べてます。ブックレットの写真を見ると、31日のショーで、ディランの弾くテレキャスターはロビーのを借りてるようで、その代わりロビーはSGを弾いてます。

●予想以上の出来。これは素晴らしい新プロダクションでした。ボックスは手に余るという人はBCミックスのみの2CDも出ます。レコード・コレクター誌の次号はこのボックスの特集ですが、楽しみに待ちます。


2013.08.04

ガース・ハドソンのビルボード東京公演を観る

Garthbbl2●8月2日に行われた、ガース・ハドソンのビルボード東京公演を見て来ました。私の見たのは19時からのファースト・ステージ。ガースのバンドは、今年のフジロックに出た後、ビルボード大阪で演奏してから、ビルボード東京というスケジュールでした。

 お客さんは良く入っていて、特にセカンド・ステージは全席完売表示。ガースはちょうどこの日76歳の誕生日でしたが、公式サイトには、Garth's last performance of his 75th year!と書いてあります。

●ザ・バンドの頃から長年連れ添っている嫁さんのモード・ハドソンをヴォーカルにした6人編成。嫁さん以外は、打楽器は2人(Ernesto "Ernie" Colon, Steve Sacco)、ギター&ベース1人(Paul Rigby)、キーボード&サックス&ベース持ち替え1人(Marty Grebb)。打楽器だけでステージの4割くらいを占拠。

 嫁さんのモードは車椅子に大きな杖を持っていて、衣装も黒ずくめなので魔法使いのお婆さんみたい。ガースは左奥に位置していて、楽器は正面に2段重ねのシンセ、右にアップライト・ピアノ、左にオルガンがあって、ガースをコの字型に囲む感じ。嫁さん同様に黒ずくめの衣装に帽子、ヒゲもじゃなので表情はほとんど分かりません。

●1時間ちょっとのステージで演奏したのは8曲。うち、ザ・バンドの曲が Don't Do It、The Wheel's On Fire、It Makes No Difference、Chest Fever、The Weight の5曲。他はファンク風1曲(ロビー抜きザ・バンドの1作目「ジェリコ」に収録の Move To Japan でした)、ラテン1曲。それから、知らない曲でしたが、帰宅してから歌詞を頼りに調べてみたら Mink DeVille というバンドの Something Beautiful Dying というタイトルのとても美しい曲を1曲めに演奏してました。

●ショーとしての出来やバンドのクオリティは今ひとつという印象で、このバンドを受け止めるにはガースへの愛が必要かも、と思いましたが、主に曲の冒頭でやる、形式の自由なガースの即興的な無伴奏ソロは非常に魅力的で印象に残りました。私はそれで十分。というかガースばかり見てたので他のメンバーが何してたかあまり分かりませんのです。

 お約束ではありますが Chest Fever 冒頭のソロでは、最初に正面のキーボードを弾いてからそのまま体を移動して右のオルガンに移るという演奏で、内容もバッハのトッカータとフーガからの引用を含んだ、バッハの幻想曲みたいで素晴らしかったです。あらためてこの人の音楽のバックボーンの広さ、深さを思い知らされました。演奏後に正面を向こうとして足が抜けなくなって、笑いを取ってましたけど。

 The Weight の前にはピアノで My Old Kentucky Home を静かに演奏したのですが、以前彼が Song to Soul という番組に出た時に、賛美歌風のパッセージを弾きながら、この曲はアメリカ音楽の色んな伝統の中から生まれてきたんだよ、と語っていたのを思い出したのでした。

●ステージ上のガースの挙動は非常におかしく、ザ・バンド時代は寡黙な哲学者然としたガースでしたが、今のガースは仙人というか変人のよう。Wheel's on Fire ではアコーディオンを弾いたのですが、演奏前に何かうつむいて足元でもぞもぞしてると思ったら、アコーディオンを付けようとしてたのでした。結局は恥ずかしそうに後ろを向いて、途中上着を1つ脱いでアコーディオンを付けたのですが、いったいアコーディオン付けるのに何分かかるんだという感じ。

 別の場面では、立ったまま片手をキーボードの上に置いて身を支えるようにずーっとフリーズしていて(笑)、お歳がお歳ですから具合悪くなって一瞬そのままぶっ倒れるのかと思ったのでした。最初ステージに登場する時も、先に他のメンバーが演奏を始めてからこそこそ気付かれないようにステージに上がるという感じ。とにかく、動作がスローモーションのようで彼の中ではまったく一般人とは別の時間が流れているんでしょう。車の運転をするそうなので、ちゃんと別の市民モードもあるんでしょうけど(笑)。

 彼は、キーボードに覆いかぶさるように身をかがめて演奏するので、平土間の席からは彼のこうした変な挙動はあまり良く見えなかったかもしれません。

●ちょうど、この日はガースの76歳の誕生日。最後に嫁さんから「今日はガースの誕生日です」と言葉があり、バンドの演奏と一緒に、場内の皆で、Happy Birthday To You の合唱をした場面はちょっとウルッと来ました。

 プロの演奏家から尊敬される人なので、2公演ともプロの方々が見に来ていたということですが、特にセカンド・ステージはハッピー・バースデイの場面で、同じくフジロックからビルボードというスケジュールで前日東京でショーをし、この日は客席にいたダニエル・ラノワがバースデイ・ケーキを持って登場。一緒に録音、共演したことのある佐野元春をステージに呼びあげて、ラノワのギター、佐野元春のコーラスで I Shall Be Released を演奏したそうです。私はファースト・ショーだったのでそのシーンに立ち会えなくて残念。こればかりは運なので。

●そんなに多くを期待せず、最愛のザ・バンドの奏者の生姿を30年ぶりに拝んでおこう位の気持ちで見に行ったのですが、幸福感に包まれて帰ったのでした。ガースの生演奏がまた見れるのかどうか分かりませんが、彼らが、日本ツアーは楽しかったね、という気持ちに包まれて帰国してくれたのならそれで良いかな。うん。

2013.07.23

ザ・バンドの Rock of Ages が Live at the Academy Of Music 1971 (4CD) として新装発売

●アルバム Rock of Ages で知られるザ・バンドの1971年12月、NY の Academy of Music で行われたコンサートの録音が4CD+1DVDの新装版でリリースされます。

Live at the Academy
Live at the Academy

●詳細はまだよく分からないのですが、JAM BASEというサイトによると、4CD中の2枚は Rock of Ages をボブ・クリアマウンテンがリミックスしたもの、2枚は New Year's Eve At The Academy Of Music - Soundboard Mix というものだそうです。

 クリアマウンテンの派手なサウンドと、派手さとは遠い Rock of Ages のサウンドどどう合うのかなという気はしますが、どうなるんでしょう。

●この時の公演は、12月28日から31日までの4公演。最初にリリースされた Rock of Ages も、未発表曲(ディランが参加した4曲を含む)を追加して発売された Rock of Ages も複数日の音源が混在していましたが、今回含まれる2CD分の New Year's Eve At The Academy Of Music - Soundboard Mix というのは、文字通り最終日のみの音源ということになるのでしょうか。

●DVDも付きますが、このコンサートの映像で公式に出たのは、A Musical History という彼らの5枚組アンソロジーに付属していた Don't Do It だけ。他の映像は非公式にも見たことがありません。他にもあったということなら、むしろ映像の方が楽しみですが、さて。

●ちょっと上げ底感のあるリリースですけど。発売は9月17日予定。



(追記)
 DVDは残念ながら5.1surround音声で映像用ではないそうです。

(追記2)
 サラウンド音声に加え、King Harvest と The W.S. Walcott Medicine Show の映像を収録だそうです。

2013.03.24

リヴォン・ヘルムのトリビュート公演 Love for Levon を見て、ちょっと思った。

●ブルーレイ(2CD付き)が届いたので見ました。去年の10月3日に行われた公演の全曲のフル収録と思います。収録曲はこちらに載ってます。

Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]
Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]

●このトリビュートではThe All Star Bandという名称のハウスバンドが編成されていて、ディレクターはリヴォンの晩年の活動を支えたラリー・キャンベルとベース担当のドン・ウォズ。ギターに現在クラプトンのバンドに参加してツアー中のグレッグ・リースがいます(ペダル・スティールは弾いてません)。

 ハウスバンドが出ずっぱりというわけではなく、リヴォン・ヘルム・バンドがバッキングをする場面もあります。ハウス・バンドが実質2つという感じ。

 ロビー・ロバートソンはもちろんいませんが、ガース・ハドソンは数曲で登場します。ザ・バンドのライブ盤「ロック・オブ・エイジス」や「ラスト・ワルツ」にも参加してたハワード・ジョンソンが、50年以上経ったこの公演でもホーン隊の中で元気にチューバやバリトン・サックス吹いてます。

 リリース前に米PBSで放送されていて、その告知映像がこちら。

●出演者はすんごい豪華。それだけリヴォン・ヘルムという人が尊敬されてたということなのでしょう。あちらでの訃報も Legend とかいう見出しついてましたし。

 派手な演出なし。オープニングでウォーレン・ヘインズがひょこっと出てきて歌い慣れてる The Shape I'm In サクっと歌ったと思ったら、そこにアコースティック・ギター一本持ったグレッグ・オールマンがひょこっと加わって Long Black Veil 歌ったり、そっち系が好きな人は冒頭からニヤニヤします。次が去年日本に来たヨーマ・コウコネン、って今はいつなんだ。

 自分の持ち歌のようにきっちり歌えてる人もいれば、急仕上げみたいない人もいたり(歌詞をプロンプター頼りの人も)。Life Is A Carnival をピアノ弾きながら自分の曲みたいに歌うアラン・トゥーサンは元々この曲の編曲に関わっているのだから当然とはいえ流石です。Wide River To Cross を歌うロジャー・ウォーターズは完全に自分の世界に染め上げてしまってる感じで、別の意味で流石。Tennessee Jed でメインにクレジットされてるのはジョン・メイヤーですが、歌ってるのはラリー・キャンベルでちょっと残念(ラリーの歌も悪くないですが)。

●ラストの全員登場の The Weight の歌い出しはメイヴィス・ステイプルズですが、「ラスト・ワルツ」に参加した人の中で今回も出演している人ってメイヴィスだけ。ウィンターランドでの「ラスト・ワルツ」公演にライブ出演した人に限ればゼロで(ホーンのハワード・ジョンソンを除く)、あらためて時の流れを感じてしまいます。同曲でソロを弾いてるロバート・ランドルフは正直暴れすぎですよ、あんた(爆笑)。

●聴き応えのある、いいトリビュートだと思いますが、その最大の貢献は、多くを占めるロビー・ロバートソンの楽曲なのは見ててちょっと複雑な感じ。演奏されてる Tears of Rage や Whispering Pines はそもそもリヴォンがリード・ヴォーカルの曲じゃないのだから、リヴォン・トリビュートというよりザ・バンド・トリビュートです。

 先日のグラミー賞授賞式でリヴォンへのトリビュート演奏があった時にも、ロビー・ロバートソンはいなかったわけですが、「終わらない確執。リヴォン・ヘルム夫人はグラミー・トリビュートへのロバートソンの参加を許さなかったのか」というタイトルのこちらの(推測含みの)記事を読むとリヴォンの怨念が家族(夫人)にまで引き継がれてしまってます。

 ちなみに、ザ・バンドの楽曲について、ロビーが他のメンバーをさし置いて名声を独り占めにしてるのは公平じゃないとリヴォンは発言してますが、この点について、上の記事へのコメントで、晩年のリヴォンのバンドの番頭だったラリー・キャンベルの興味深い発言を引用してくれてる人がいます。

「リヴォンと曲を書いた僕の経験では、作曲に関して、彼は労を取ろうとはしなかった。僕らの共作曲で、曲を仕上げる作業は僕の仕事だった。」(”writing with Levon, my experience was, he wasn’t gonna do any labor where writing a song is concerned. The songs we’ve co-written, when it came down to constructing the song, that was my job.” )

 ザ・バンドが、89年にカナダで、94年にアメリカでそれぞれ名声の殿堂入りしたときにも、他のメンバーたちはロビーと一緒に演奏することは厭わなかったことを考えると、リヴォン側のロビーに対する態度は頑なすぎると思う人もいるでしょう。

●晩年までロビーの書いた曲を歌い続けたリヴォン・ヘルムという人が、ロビー個人に対する忌避感情と、ロビーの曲を演奏することと、どう折り合いを付けてたのかなと、ふと思ったりもしました。

2013.02.08

リヴォン・ヘルムのトリビュート公演 Love for Levon の映像が3月にリリース

●2012年10月3日に、ニュージャージの Izod Center で行われた、リヴォン・ヘルムのトリビュート公演の映像が3月に公式発売されます。発売はTime Life Records

 コンサートの趣旨は、リヴォン追悼はもちろん、ウッドストックにある、リヴォン晩年の活動 Midnight Ramble の会場の運営を支援(Benefit to save the barn)することも含まれています。コンサートの公式サイトはこちら

Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]
Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]

 上のはブルーレイ2枚、CD2枚の4枚組版です。

●派手な活動とは無縁だったリヴォン追悼らしく、あまりメディアに派手に取り上げられなかった公演で、ディランもロビーも出てませんが出演者はなかなか豪華。大御所アラン・トゥーサンをはじめ、僚友ガース・ハドソン、ABBからグレッグとウォーレン、ジョン・ハイアット、ジョン・メイヤー、メイヴィス・ステイプルズ、ブルース・ホーンスビー、ロジャー・ウォーターズ、マイ・モーニング・ジャケット、親父が出ないならと(笑)ジェイコブ・ディラン等々。実力者がずらり。これだけの人が揃ってしまうことにリヴォン・ヘルムという人の人柄を偲ばせます。

 音楽ディレクターを努めたのはドン・ウォズとラリー・キャンベルで、2人はハウス・バンドのメンバーとして参加してます。

●Youtubeにたくさん上がっている客撮り映像を見るだけでも結構楽しめます。マイ・モーニング・ジャケットのような若いバンドが、It Makes No Difference をレパートリー入れてちゃんと演奏してるのを見るのは単純にうれしいもので。多くの曲でお客さんが一緒に歌ってるのもいいなあ。

 リヴォンとロビーの関係が最後まで難しかったとしても、歌われてる多くの曲の作者ロビー・ロバートソンの曲の素晴らしさもあらためて実感させられます。

●当夜のレポとセットは、WCBSFMのこのページで見れます。

●10日行われるグラミー賞授賞式では、T-ボーン・バーネットの監督の下、メイヴィス・ステイプルズ、エルトン・ジョン、ザック・ブラウン、マムフォード・アンド・サンズ、ブリタニー・ハワード(アラバマ・シェイクス)が参加したリヴォンへのトリビュート演奏があるそうです。

2012.04.28

Levon Helm Band / Ramble at The Ryman (DVD)

●リヴォン・ヘルム・バンドの2008年9月のライブ。収録はナッシュヴィルのカントリー音楽の聖地ライマン・オーディトリアム。CDでも出ていてそちらはグラミー賞取ってますが、私の持ってるのはDVDだけです。

Ramble at the Ryman [DVD]
Ramble at the Ryman [DVD]

 リヴォン・ヘルム・バンドの演奏は、この5ヶ月前にMerle Festivalに出演した時のライブ音源が正式に発売されてますが(ここにちょっと書きました)、曲目はそれほどダブっていません。何より、リヴォン・ヘルムという人の晩年の活動が映像としてきちんと記録されたのは嬉しいです。

 収録より3年経った2011年のリリースですが、リヴォンの声はこの翌年にオールマンの結成40周年ビーコン公演にゲスト出演したときには不安定で、昨年はもう歌える限界という感じでした。

●出たときに買って1回さらっと見ただけだったのですが、あらためて見直してみました。

 アメリカのポピュラー音楽の伝統に根ざした、普通の素朴な音楽。リヴォンの声も当然病気後の声で往年の力強さはないです。リヴォンに思い入れのない人が見たら、爺さん率いる田舎バンドにしか見えないかもしれません。でも、こういう音楽こそ生き残る。ウィントン・マルサリスのようなインテリがやる頭でっかちな伝統回帰とは大違い。ここにそのまま伝統があるじゃないか、という感じ。別にウィントン嫌いじゃないですけど。

 Merle Fest盤でも聴けた Ann Lee なんて三重唱に楽器はラリーのフィドルだけという素朴さ。その後に続く Rag Mama Rag は、この歌がどんな根っこの上に出来た歌か完全に実感させます。

 Chest Fever の冒頭は、ザ・バンド好きにはガースのオルガン即興ソロでお馴染みですが、この盤のもいい感じ。見てない人もいると思うので内容は内緒にしておきます。

●Merle Fest盤同様リヴォンがすべてのヴォーカルを取るわけではなく、娘のエイミーやラリー・キャンベル、ブライアン・ミッチェルが歌う場面もあります。彼らは傑出した歌い手ではまったくないのでちょっと物足りない感じ。でも、最後に出てきて The Weight を歌うジョン・ハイアットの歌はやはり別格。流石です。

●Merle Festでも参加してたマンドリンのサム・ブッシュが途中から参加して、最後まで出ずっぱりで弾いてます。バックに徹していて目立つシーンは少しだけですが彼のマンドリン素晴らしいです。才人。

 他にハープ、ヴォーカルが聴けるリトル・サミー・デイヴィス(この翌月心臓発作で倒れてます)、シェリル・クロウがゲスト参加。シェリルはリヴォンと Evangeline をデュエットしてて歌詞の記憶が怪しいですが、まあご愛敬。バディ・ミラーもずっと出てますが自分はこの人のことよく知りません。

●4人のホーン隊の付く大編成ですが、本当に普通のシンプルな音楽。Back to Memphis ですらベースはアップライトです。

 これがグラミーというのはリヴォンに対する過剰リスペクトかなという気もしますが、もし自分がこの現場に居たら幸せな気分で帰ったと思うし、最後の The Weight では泣いたかもしれない。ステージ上の全員が本当に楽しそうで、かつてクラプトンが憧れた「ザ・バンド」というバンドの有り様を決めた核になったのはリヴォンだったのかも。

 ドラムを叩くリヴォンの姿は文句なしに格好よく、ライマンの雰囲気も良く伝わってきます。

Levonryman
(写真はDVDからのキャプチャ)

2012.04.20

リヴォン・ヘルム(1940-2012)

●ザ・バンドのドラマーを長年務め、近年はリヴォン・ヘルム・バンドを率いて活動していたリヴォン・ヘルムが、4月19日に病気のためNYの病院で亡くなりました。71歳でした。かつて活動を共にしたボブ・ディランがツアーで滞在中のブラジルから送った言葉はこちら

●2月に行われたヒューバート・サムリン追悼コンサートの出演者として伝えられながら出演をキャンセル。同時期に、彼の住むウッドストックで継続している Midnight Ramble セッションの出演を病気治療のためしばらく休むという告知を公式サイト上で見た時は、声帯、というより命を失いかける大病を患ったことのあるリヴォンに、こういうことも起こり得る、と覚悟はしていました。

●幸い、何度か来日して演奏、歌を聞かせてくれた彼は、日本での体験について、こんな言葉を残してます。


「日本の会場はどこも満員だった。その国の貨幣に、天皇や政治家ではなく稲の絵がついているのを知ったときから、日本を好きになるのがわかった。農民は、尊敬の対象であるといってもよかった。あの国の人たちは、何がいちばんたいせつなものなのか、それを知っている」
(「ザ・バンド軌跡」(菅野彰子訳、音楽之友社刊。原題 The Wheels on Fire by Levon Helm with Stephen Davis))


 ザ・バンドのメンバー中、唯一のアメリカ人。農家の子供として生まれたリヴォンらしい言葉ですよね。彼はまた、スタジオで作った最後の2作のアルバム、Dirt Farmer と Electric Dirt で、タイトルに「土」(dirt)という言葉を付けた人でもありました。

 声帯を失いかけるという大病に見舞われ、経済的な困難に見舞われながら、彼はドラムを叩き続け、歌い続けました。

●さよなら、リヴォン。あなたの歌が本当に好きでした。

2011.08.22

Wolfgang Vault で見れる「ラスト・ワルツ」の別映像(続き)

●前回の続きで Wolfgang Vault の「ラスト・ワルツ」映像の話で、ボブ・ディランの出演シーンについて。

 ボブ・ディランのシーンは、映画「ラスト・ワルツ」では、フェード・インするように入ってくる Forever Young 以降の映像しか見ることができません。初めて映画を見たときは、単にこのシーンだけを使ったのかなと思ってましたが実は映画用のフィルムもForever Young 以降のシーンしか撮影されていないことを、前回触れたリヴォンの本(「ザ・バンド 軌跡」)を読んで知りました。

 本の中に、ディラン側の撮影許可が取れないままディランのステージが始まってしまい、ようやく最後の2曲を強硬撮影した様子が書かれてます。

 最後の二曲になった。技術係があわててヘッドセットをつけ、カメラがむきを変え、照明がつき、ステージはふたたび映画のセットと化した。<フォーエヴァー・ヤング>のあと、ボブがまた<ベビー・レット・ミー・フォロー・ユー・ダウン>をやりだした。ぼくたちはおどろいたが、きっとボブは映画の中に昔のロックンロールが一曲もないことに気づいたのだと考え、あとに続いた。やがてボブもくわわって大フィナーレがはじまり、ステージの横でビル・グレアムが大きな声でボブの側近たちを止めようとしていた。演奏がつづくなかで、このごたごたがあり、ビルが「ばか!カメラをまわせ!これをとらなきゃだめだ!」とさけぶのが聞こえた。ボブは怒ってなかったし、ぼくたちも笑ってそのままよい演奏を続けた。(253頁)

 ということです。グレアムのやったことは完全に正しかったと思われます。というか、あのフィナーレが撮影されなかったかもしれないことを考えるとゾッとします。

●Wolfgang Vault の映像はボブのセットもすべて見ることができるのはありがたいです。最初のBaby Let Me Follow You Downから演奏部分は修正されまくってますが、ボブのヴォーカルはそのままだと思います。さすがにディランにスタジオでもう一度やれとは言えなかった思いますが、そもそも修正の必要をまったく感じない出来。

●Forever Young 中間のロビーの素晴らしいソロはそのまま使われてます。その後で、ボブが最前列の客の方を向いて微笑むシーン(下の画像。DVDより)は、自分が最も好きなシーンなのですが、Wolfgang Vault の映像(4:14あたり)だとちょっと分かりにくいですね。ボブはヴォーカルに戻った後もそちらの方を指さすシーンもあるのですが、あれはどういうやりとりなのでしょう。

Lw_bob1

●無修正音源を聴くと、修正というより別音源というくらいの差し替えがある箇所もあり、もはやドキュメンタリーとしての同一性すら疑わしいくらい。

 前回書いたジョン・サイモンの言葉によると、ホーンセクションは取り直したということですが、例えば、The Shape I'm In はそもそも「ラスト・ワルツ」のステージではホーンなしの演奏なので、公式版は完全なオーヴァーダブです。映画の同曲のシーンでは、ステージ上にホーンが映ってないのにホーンが鳴るという不思議な場面が展開されますが、無修正音源を初めて聴くまで自分はそのことに気づきませんでした。

●ちなみに、ザ・バンドは「ラスト・ワルツ」の年の76年にもツアーをやっていますが、FMで中継された9月18日のNY、Palladiumでの演奏を聴くとThe Shape I'm In はホーン付で演奏されてます。ツアー時にホーン付で演奏しているのに、ラスト・ワルツ(11月25日)ではなぜホーンを外し、あとで丸々オーヴァーダブするという面倒なことをしたのか不思議です。
(キング・ビスキット・フラワー・アワー音源の聴ける8月16日のDC公演はホーンなし。上のNY公演は Palladium のこけら落とし公演)

●「映画」を見ても、リヴォンの本を読んでも、ろくに準備もせず行き当たりばったりでカメラ回している凡百のライブ映画と異なり、スコセッシは周到な準備をして「ラスト・ワルツ」に臨んでるのが分かると思いますが、音楽好きの知人を話していると、スコセッシの音楽映画が好きでないという人も結構います。
 劇映画のように緻密に構成し過ぎて、ライブ演奏の「生」の雰囲気が吹っ飛んだ「作り物感」がするあたりが嫌われる理由なのかな、と思うのですが。ストーンズの映画だと 作り物的な Shine a Light(スコセッシ) より Let's Spend The Night Together(ハル・アシュビー) の方が好まれるみたいな。

●スコセッシは、ジョージ・ハリスンのドキュメンタリー映画「Living In The Material World」を制作していて、初公開はテレビで、10月5日に米HBOで放送予定(リンク先で予告編が見れます。映画館公開は11月23日)。ボブの No Direction Home はとても良かったので、むしろドキュメンタリー映画の方が抵抗なく受け入れられるのかなと思います。

 NHKも共同制作として関わっているので、No Direction Home の時同様、日本でも放送されるはず。今まで必ずしも深く掘り下げられて来たとは言えないクラプトンとの交友関係も触れられるはずだし、大変楽しみです。

2011.08.18

Wolfgang Vault で見れる「ラスト・ワルツ」の別映像

Lastwaltz●ビル・グレアムがらみのライブ音源を中心に公開していた Wolfgang Vault が、少し前から映像の公開を始めてます。その中に含まれているザ・バンドのラスト・ワルツの映像が含まれていて、50以上の映像を見ることができます。

 映像は数年前から出回っていて、映画用とは思えないアマチュア撮りのような映像だったので出所はどこなのかと思いましたが、おそらくビル・グレアム側のスタッフが撮ったものということなのでしょう。
 白黒で画質はあまりよくありませんが、部分的にしか見れなかったブートとは違い、ビル・グレアムの最後の挨拶と恒例のグリーンスリーブス(途中)までフルで見れます。

●スコセッシ作品として映画にまでなった伝説的なお別れコンサート The Last Waltz ですが、音源部分はかなり事後修正されてることは今ではよく知られていると思います。というより、この解散コンサート自体、メンバーの合意によって決められたものではなく、ロバートスン=スコセッシ組が推し進めた「解散芝居」だったことを後から知らされたわけです。

 以下、リヴォンの言葉でその辺の事情を辿ってみます(「ザ・バンド軌跡」(菅野彰子訳、音楽之友社刊。原題 The Wheels on Fire by Levon Helm with Stephen Davis))。

 9月のいずれかの時点で、ロバートスンとマネージメント・チームが勝手に事態を進めていることがわかった。もうたくさんだと感じたロビーはマネージメント・チームといっしょになって、ザ・バンドをつぶして終わりにすることにした。最初それを聞いたとき、僕は冗談だと思った。しかしロバートスンは、もううんざりしてるんだ、これは真剣な話だといった。実際、ロビーすでに具体的な計画を立てていた。(239頁)

「ほんとうは何が理由でグループをつぶしたいのか知らないが。迷信深いことをいって自分の命が惜しいからといって、ぼくたちの音楽をとりあげて引退させるなんて最低だ。弁護士と会計士の全部を見方につけているのは知っているが-やつらは甘いことばかりいうが自分の取り分のことしか考えていないんだ-、これは間違っている」
 ロビーは何もいわず、会議は終わった。僕は部屋を出た。(241頁)

 続いて、コンサートでの録音について。

 ジョン・サイモンはつぎのようにいっている。「たしかマディ・ウォーターズのヴォーカルをのぞけば<ラスト・ワルツ>のなかでライブの音そのままなのは、リヴォンの音だけだと思う。ほかのものはすべてオーバーダブしてやりなおしてある。リヴォンはラスト・ワルツのいっさいにいや気がさして、ロサンジェルスにいなかった。ロビーはもう一度やってくれと頼んだが、リヴォンは知らん顔だった。すべてがいかがわしい感じがする。リヴォンはぼくにそういうっていた」
「オーヴァーダブした方がいいというロビーの考えにも一理あった。リチャードの歌はできがわるかった。リックのベースは調子がはずれていたし、ロビーのギター・ソロももっといいものにしたかった。それにホーンの録音はバランスがわるく、しかたなくヘンリー・グローヴァーとぼくのアレンジでニューヨークで録音をしなおした。すごいと思ったのはリヴォンのドラムはもともとやり直す必要などなかったことだ。リヴォンは最初からちゃんとやっていて、それがそのまま最終的なドラム・トラックになった。リヴォンは、オーヴァーダブが実際に行われたことさえ知らずにいたんじゃないかと思う。」(261頁)

 「ラスト・ワルツ」についてのリヴォンの言葉。

 いまも大勢の人が『ラスト・ワルツ』がとても好きだとぼくにいいにくる。僕は礼儀正しくありがとうといい、ぼくにはあの映画を恥さらしに思えることはいわないようにしている。(263頁)

 もちろん、これらは一当事者の視点であって、立場が変われば別の視点があると思います。リヴォンだって、「ラスト・ワルツ」のステージをまったく楽しめなかったわけでなく、自伝の中にはそういう言葉もあります。
 ロバートスン以外のメンバーとは面識がないにもかかわらずゲストに呼ばれたニール・ダイヤモンドについては(彼がなぜゲストなのかという)リヴォンの不満の言葉もありますが、私はダイヤモンドとの Dry Your Eyes が好きで、ラスト・ワルツの暴露話を知った後でももそのことは変わらないです。ここで見れる修正前の Dry Your Eyes と比べるとかなり変わっちゃってますけど。

 リヴォンが楽しそうに回想してるDown South in New Orleans も私の好きな演奏ですが、映画には未収録なので「グレアム映像」で初めて演奏シーンが見れるようになりました。リック、ロビー、ボビー・チャールズ、ドクター・ジョンの4人がステージ中央でマイクを囲んでます。ドクター・ジョンはギター弾いてたんですね(画像はブートのもの。Wolfgang Vault の映像はもっとマシな画質です)。

Downsouth

 こちらも音の方はかなり修正が施されてます。ガースのアコーディオンなんて完全に別物。

●長くなったので中断。続く(予定)。

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