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カテゴリー「日本のロック」の20件の記事

2013.05.06

山下達郎の新フェスティバルホール公演を見る

●山下達郎のフェスティバルホール公演に行ってきました。5月3日、4日の2公演。

Book

●8月からツアーが始まりますが、それとは別の新フェスティバルホールのオープンに合わせた2日間だけの公演で、フェスティバルホール主催。チケットは「ぴあ」のようなチケットサイトでは売らずフェスティバルホールのサイトを通じてしか売らなかったので、発売1時間後でもチケットが買えたのは意外でした(たぶん単位時間当たりのチケット処理数が少ない)。自分は2枚買え、友人も2枚買え、日にちもダブらないという普段の行いの良さゆえの天の恵みも手伝い、3日と4日の両方の公演を拝ませてもらいました。連休ありがたや。

●上の画像はパンフレットの一部ですが、写ってるメガホンは旧フェスティバルホールの備品です。山下達郎のコンサートではメガホンを使ったお遊び箇所があるので、ホールの関係者が建替えによる一時閉館の時にくださったそうです。今回、このメガホンは無事新ホールに帰還しました。返したのかそのまま持ってるのかは知りません(笑)。

 ちなみに、旧フェスティバルホールの最後の公演は大阪フィルの「第9」でしたが(2008年12月30日)、ロック系の最終公演は山下達郎で(2008年12月28日)、6年ぶりにツアーをやった動機の一つは彼が愛した旧ホールが取壊しでなくなってしまうことでした。

●正直に言ってしまうと、彼のやってる音楽は自分の好みのツボからはズレてます。

 初めて山下達郎という人のコンサートを見たのはまだ最近。彼がツアーを再開した2008年です(しかもなぜか長崎公演)。彼の音楽を録音でしか知らず、生のコンサートを見て圧倒される体験をしていなかったなら、彼のコンサートに毎回行こう、遠征してまで見ようなどという気にはなっていなかったと思います。自分が山下達郎という人から感じるのは、天才なんてものではなく努力の人。意志の力で妥協せず一つ一つ積み上げていけば、どれだけ高いところにまで登れるかを身をもって示す人。自分がこの人に圧倒されてしまうのはそういうところ。

●今回の2公演はツアー時のような舞台セットはなく、背後にシンプルで抽象的な映像が映るだけ。私はこっちの方が好きかも。

 内容は年季の入ったファンの方が色々報告してくれると思いますが、ほとんどやらなくなってた曲、ステージ初披露曲も登場し、コアなファンの人たちは結構喜んでました(私はコアではないです)。いつもやる曲でも歌や演奏のクオリティがとても高いのでそれだけでも満足なんですが。

●印象に残ったところは多いですが、その一つが、自分は音楽をやる人間だから政治的なお話はしない。でも最近は色々考えることが多い、と語ってから歌われた Dancerという曲と続けて間を置かずに歌われた「希望という名の光」の箇所。

 Dancer は、学園紛争の時代、自分の先祖の生まれた王道楽土に帰るといって朝鮮半島へ去って行ったきり二度と会ってないし現在もどこにいるか分からないという知人を思って昔書いた歌だと紹介してましたが、立ち位置を見つけられない状態をシニカルに歌う曲(2度ある長いサックス・ソロは聴き応えあり)。「希望という名の光」というスピリチュアルな内容の曲をその直後に聴くと、この曲が普段演奏される時とは違った意味で、独特の重みを持つように感じられました。

 今回はあまりきっちり作り上げず、カジュアルなショーをするつもりと本人は語ってましたが、それでも、こういう瞬間を作り上げてしまうのが山下達郎という人なのですよねえ。

●最近はカバー曲が多いけど普通のヒット曲のカバーをやる人が多い、自分は人がやれないようなカバーをやりますと言って歌いだしたのが、ビーチ・ボーイズの God Only Knows とラスカルズの Groovin'。前者は始まった瞬間驚きの拍手という感じで、特に初日は会場がちょっとどよめきました。しかもアレンジはフレンチ・ホルンのパートもキーボードで再現したビーチ・ボーイズの完全コピー。良いもの聴かせてもらいました。延々と続くようなエンディングの多重コーラスはちょっと短めでしたけど。

●2日目の方が2曲多かったですが、両日とも素晴らしかったので初日だけ聴いた人は残念がる必要はございません。拍手が止まず次の曲に移れないことが何度も起きたのは二日とも同じ(普段のツアーでもこういうことはほとんど起きません。ご本人曰く「ええ、お客さんや~」)。ただ、2日目の方がちょっとリラックスしてたかも。Bomberのカッティングソロは2日目の方がノリノリで長かったし。ちょっとリズムずれたりして、本人はそういうの嫌でしょうけど、いいんですよ、それで(笑)。

●オープニングの「新・東京ラプソディー」の歌詞の「東京」の部分が「大阪」に変えて歌われたり、その他、大阪の人を喜ばせるような、この街に対する愛情のある言葉がそこかしこで聞けました。私は大阪いまいち馴染めま・・・あ、いや、あまり良く知りません、この街のこと。達郎氏はどこの公演でも、ここはワン・アンド・オンリーのスペシャル、という話を嫌味なしに語ります。プロですね。

 セットリストは吉岡正晴さんのブログにレヴューと一緒に載ってます。

●という感じで、公演当日の午後に大阪入りし、5日の午前中に東京に戻ってまいりました。ちょっとベタな観光もしたのですが、ちとくたびれました。体力もなくなってきたし、旅聴きするときはもう音楽だけ聴ければいいや、って感じですかねえ。それで十分満たされるし。


●新装なったフェスティバルホールのことも少し書いておきます。

Newfestivalhall_2

 2008年12月に建替えのために閉館した際の、このホールでの最後の公演(大阪フィルの「第9」)も見ていて、その時に書いた文章をあらためて読み返したら、「神様が許しくくれればまた来ます。」とありました。あれから4年半近く。神様は新しいホールを見ることを私に許してくれたわけですね。月日の経つのはなんと早いこと。

 ホールは巨大高層ビルの一部に生まれ変わりましたが、旧ホールの川側の外壁にあった牧神のオブジェはそのまま再現されてます。

Oldnew

●内部が全体的に赤いトーンで統一されてるのは旧ホールと同じ。ビル内に入るとすぐ大階段。登りきったところに入場ゲート。ゲートを入ると進路は右に折れ、少し行くと長いエスカレーター。大階段とはちょうど逆向きの方向にホールへ上がって行きます。客席までの導線が長いホールというと東京国際フォーラムのホールAを思い出しますが、あれは、お客さんの利便のことなど考えずにデザイン優先で作られた臭いがぷんぷんします。新フェスティバルホールにはそういう感じはしませんでした。私個人の印象ですが。

Stair

Esca

 このエスカレーター、天井が低く薄暗いので、なんだかディズニーランドのスペースマウンテンの最初の所を思い出したのですけど。

 入場してから席に着くまで少し時間がかかるので初日の公演は15分くらい遅れて始まりました。ホールの担当の方は、お越しの際は多少お早めにどうぞ、ということです(笑)。

●2日とも3階席で見ましたが、ステージまでの距離はそれほど遠くなく、旧ホールの2階席の上の方から見るのとそれほど変わらないように思いました(旧ホールの印象は以前訪れたときに2階に上がって見下ろしてみただけですが)。椅子は前後のピッチがたっぷりあるので座りやすいです。座席前後の段差はけっこうあるので人の頭でステージが見にくいこともなし。

 キャパの違いはありますが東京のNHKホールの3階席よりステージは近いです。雰囲気は公式サイトで確認できるので、そちらでどうぞ。

●当然PAを使ったコンサートでしたが、音はとてもバランスが良く聴きやすかったです。音の悪いホールにあるような、回りこみの多い、特に低音がブーミーでボワンボワン鳴るような感じがまったくありません。山下達郎は音にやまかしい人なので音響スタッフも優秀な方々だと思いますが、これだけの音で鳴らせるのだから聴きにくい音しか出せないならそれは単純にスタッフの技量の問題だと思います。まあ、新ホールの音響担当は世界中で実績を積んでいる永田音響設計なので。

 クラシックの生音はまだ未体験ですが、可能ならそのうち体験してみたいです。神社仏閣や温泉巡って日本中旅する人がいるなら、ホール巡りするような変人がいたって別にいいでしょう。

●旧ホールにも飾られていた過去の出演者の写真(クラシック系の出演者中心)は、3階席のフロアにあるので、1、2階席の人は気がつかなかった方も多いかも。同じ所に71~78年まで使われてたスタインウェイ・ピアノも展示されてます。

Gallery

●昔は、ツェッペリンもクラプトンもニール・ヤングもみなここでやったし、中止になってしまったウイングスも1回はここが会場にあてがわれてました。今は大物のロック・コンサートは巨大会場でしか開かれなくなってしまったので、新フェスでポップ、ロック系の大物を聴く機会はおそらく少ないでしょう。建物以上に、コンサート環境の方が大きく変わってしまったわけですね。ちょっと残念ではあります。

●新しいホールがあと何十年建っているかは分かりませんが、次の建替えがあっても自分はその時この世にはいません。たぶん(笑)。

 次回はクラシックで来てみたいです。

2011.11.15

細野晴臣のロバハウス公演を見る

●11月13日に東京、立川にあるロバハウスで開かれた、細野晴臣公演を見てきました。「細野晴臣 古楽の小屋の音楽会」

Hosono_roba

 会場のロバハウスは古楽器アンサンブルの「カテリーナ古楽合奏団」の拠点。ホールというより名称通り、館という感じ。

●場内は200人も入らない位こじんまりしていて、小学校の教室より小さいです。もちろんチケットは瞬時に売り切れたようで、正攻法でチケット取ってくれた友人には感謝。

 客は小さな椅子に座って見ます。最前列の2列は椅子ではなく座布団にお座り。(写真撮影禁止ではないようだったので撮りました)。

Hosono_roba1

●メンバーは、細野晴臣、高田漣、コシミハル、伊賀航で、ドラムレスの4人編成。

 演奏は、ひと昔前の言葉でいうとレイド・バック。かなりリラックスした感じ。最新作のHoSoNoVaの路線。

 会場がとても小さく、演奏者の表情、息づかいまではっきりわかるので、最初、お客さんは固唾を飲んで見守るという感じでしたが、例によって細野さんの語りが虚実皮膜。

 「あまり練習してない」とか、「今が練習だと思って聞いて」とか、「難しいから失敗しないといいな」、「ガイガーカウンター持ってるけど放射線測るのもう飽きた」とかという感じなので、じょじょに会場もリラックス。

 アーヴィン・バーリンのThe song is endedでは、自訳の日本語詩で歌い出してすぐストップ。むずかしいからやっぱり英語で歌うと宣言し、場内爆笑。

 すでに何度かやってるクラフトワークの Radioactivity は、「別離のテーマ」からのメドレーで、2つの曲が何の違和感もなく自然につながっていく不思議さ。

●この公演は、「カテリーナ古楽合奏団」の松本雅隆氏から細野さんがハーディ・ガーディを借りたことが縁で催されることになったようで、当日も一曲、「カテリーナ古楽合奏団」から上野哲生氏(サントゥール)と松本さん(ハーディ・ガーディ)が参加して、ドローンによる即興演奏がありました。高田漣さんが弾いたネックの長い楽器はたぶんサズ。

 この即興では細野さんもハーディ・ガーディを弾きましたが、右手でホイールを回す動作が肉体的にかなりキツかったようで、最後は疲れたかき氷屋のオヤジのようにヘロヘロに。演奏後、こういうのが音楽の基本だね、と一言。

 ハーディ・ガーディは細野さんも発注してるそうですが、作るのはフランスの職人。いつできるのか、お値段がいくらなのか知らないそうです(笑)。

●アンコール3曲はすべて細野さんのアコースティック・ギターによるソロ演奏。フル・コーラスでは歌わない曲もありましたが、やはり感激。ジーンときました。

Hosono_roba2

●全75分程の公演でしたが至福。こういう機会を設けてくださったロバハウスの皆様、ありがとうございました。

「細野晴臣 古楽の小屋の音楽会」セットリスト

I'm a fool to care
Smile
Ramona
星めぐりの歌
メドレー:銀河鉄道の夜「別離のテーマ」>Radioactivity
The song is ended
The song is ended (ジャズ・アレンジ)
Time to hit the road to dreamland
しんしんしん
Instrumental (ドローンによる即興演奏)
Birthday Song
-アンコール (すべて細野ソロ)-
恋は桃色
ろっかばいまいべいびい
風をあつめて

2009.10.17

加藤和彦(1947-2009)

 取り出したCDの帯より。

「私にとって、これは単なる思い出に過ぎないが、思い出が人生にとって重要な、そして意味のあるものになる時がある。だから、皆さんが、私のこれらの思い出を共有して下さることに感謝を覚える。」


Kazuhiko_2


 さよなら。

2009.01.12

山下達郎、長崎公演

●ゆえあって福岡入りしましたが・・・


「1月11日の長崎での山下達郎公演のチケットがありますよ~」
「はい、行きます。おウチに帰るのは12日にします」


 良い音楽が聴けるならどこへでも行きますよ。


Tatsu●ということで、1月11日、長崎ブリックホールでの山下達郎公演にノコノコ行って来ました。6年ぶりのツアーとのことで立ち見も出る超満員。達郎公演初体験。

 がーん。「そこそこ楽しめるでしょ」などという私の生ぬるい気分を吹き飛ばし、山下達郎の音楽は見上げても届かないような遙かな高みを舞っていたのでありました。
 何度も涙腺が決壊しそうに・・・

 全3時間びっしり。ハイテンション。素晴らしすぎる曲、上手すぎるバンド。最高の職人気質と最高のショーマン・シップ。「そこそこ楽しめる」なんてとんでもない。こんな世界を知らないまま何十年も怠けていたとは、ああ情けない。

 達郎さん曰く、まだ4ヶ月ツアーは続くから、セットリスト等のご開陳はこれからショーを見る皆さんにご配慮のほどお願い、とのことですが、ベタな(ご本人談)という今回のセットは私にはちょうど良かったです。
 アルバムの発表がないにもかかわらず6年ぶりにツアーすることになった動機の一つに大阪フェスティバル・ホールの閉館があったそうで(事実、ポピュラー系公演では最後のショーになりました)。しかし、56歳にもならんとするのに何であんなスレンダーなんでしょ。

 今ツアーから初参加のドラムス担当の小笠原拓海は、山下洋輔カルテットでも叩いてるとのこと。ジャズやれる人のテクニックは素晴らしいです。ピアノがエレピ代用でなくコンサートグランドをきちんと使うのも感激。

 間違いなく、我がコンサート体験の最高峰の一つ。

 このツアー、一度しか見ないのは我慢ならないっ。何とか算段してまた行こうっと。

●長崎訪問は初めてでしたが、こぢんまりした素敵な街でした。近くないけどまた来よっと。

Ngs

2008.05.16

細野晴臣&ワールド・シャイネスの Billboard Live 音源が iTune Music Store からリリース

Hosono080422billboard 4月に Billboard Live 東京で行われた、細野晴臣&ワールド・シャイネスのライブ音源が、iTune Music Store からリリースされました。
 リリースされたのは22日の音源ですが、2公演中のどちらのものかは不明です。

 曲は、はらいそと Pom Pom 蒸気の2曲で1曲200円。もちろん音質極上。自分も行ったショーなのでうれしいリリースです。

 以上、単なる情報ですがブログ保守作業も兼ねて。

2008.04.23

Billboard Live 東京で細野晴臣&ワールドシャイネスを見る

 六本木の東京ミッドタウンにある Billboard Live 東京で行われた細野晴臣&ワールドシャイネスのライブに行ってみました。

 4月22日・23日の2日間、1日2公演の計4公演ですが、私の見たのは22日、9時半開演のレイト・ショーでした。

Hosono_billboardlive

 東京ミッドタウンに来たのは初めて、というか、私が最後にここに来たときは、まだこの場所は防衛庁でした・・・っていつだ(苦笑)。

 以下、ネタバレあり。

●メンバー入場時に「なんで子供がいるんだ?」と思ったら、ワールドシャイネスのメンバーのコシミハル女史でした(失礼、というか若いです。ミニスカだし)。

 セットリストはこんな感じでした。

1 Moments Like This
2 I'm Leaving It Up To You
3 When That Great Ship Went Down
4 映画「グーグーだって猫である」の音楽から(タイトル知りません。m(__)m)
-細野さん、ここでテンガロンハットを脱いで気合い-
5 Chattanooga Choo Choo
6 香港Blues
7 キャラヴァン
-メンバー紹介-
8 Pistol Packin' Mama
9 Morgan Boogie
10 Pon Pon Joki
11 Body Snatchers
12 Sports Men
-アンコール-
13 はらいそ

 時間にして70分強くらい。開幕前に清水宏氏のコント調の前説あり。

●去年12月の横浜サムズアップでのショーは行きそびれましたが、その時とはかなりセットが違います。さすが同じことの繰り返しはやりたくないお方といいますか。

 私的な感想は、前半の4曲はちょっとまったりしすぎというか、正直あまり夢中になれませんでした。
 Chattanooga Choo Choo 以降は大変楽しかったです。特に最新バンドのワールドシャイネスのバージョンをずらり並べた Pistol Packin' Mama 以降のバンドのグルーブはさすがでした。

 「速いテンポでやる」と言って始めた快速 Pon Pon Joki ですぐ歌えなくなり、テンポ落としてやり直したのには笑えましたが、あれはお約束のギャグなのでしょうか。

 MCは例によって虚実乱れ飛ぶ細野ワールド。一緒に行った友人は「よくまあ、いつもいつも適当なデマカセばかり語れるもんだ」と呆れ・・・いや感動してました。

Billboard Live 東京は初めてでしたが、ちょっとバブリー(死語)な雰囲気はするものの、演奏者の表情まで丸わかりの超近接距離でライブが楽しめるのは格別です。
 客席は上に伸びていく座席配置でどこからでもよく見えそうです。私はギャレーのすぐ前のDHというテーブル付きの席で見てましたが、ステージはこんな感じで見えます(開演前写真)。

Bt_stage

 小規模なPAも使ってますが、楽器の生音、アンプからの直接音が耳に入ってくるので音は素晴らしいです。ショーの最後に視覚的なサプライズがありますが、あれは、出演者を問わず行われるこの小屋の恒例なのでしょうか。

 チケット代は安くはないですが、キャパを考えれば不合理に高くはないと思うので、お気に入りのミュージシャンがやるときはまた来たいと思うのでありました。

2007.10.07

ハリー細野&ザ・ワールド・シャイネスによる FLYING SAUCER 1947を聴く

細野さんの最新作です。

FLYING SAUCER 1947
FLYING SAUCER 1947

 今年7月に、日比谷野音で見た還暦記念祭「細野晴臣と地球の仲間たち」では、ほぼカントリースタイルの演奏に徹してた(と思う)ので、単純に「カントリーアルバム」という先入観で聴き出しましたが、とんでもない。

 そんな単純な分類などできる音楽じゃありませんでした。

●確かに、モロ「カントリー」って曲もあります。

 うち、私が一番気に入ったのが、Sportsman のカントリー・ヴァージョン。これぞ「せーの!」で皆一緒に演奏するバンド演奏の醍醐味。短いですが、中間部のバンドのカントリー・ノリのグルーブなんて最高。高田漣のフラットマンドリンも素晴らしいです。
 細野さん自身、「多重録りでない一発録りの面白さに目覚めた」旨のことを言ってましたが、これを聴くと、その言葉に完全に納得させられます。

 かと思うと、まったく逆に、全楽器一人で多重録音なんて曲もあり(以前、森高千里に提供した Miracle Light)。

 Close Encouters は、あまりにも有名なスピルバーグ映画でのジョン・ウィリアムス作の例の「タ・タ・タ・タ・ター」をモチーフにした曲ですが(作者のクレジットもジョン・ウィリアムス)、いったい、あの単純なモチーフをこんな曲に仕上げるなんて世界中の誰が考えるでしょう。Body Snatcher の新アレンジも秀逸。

●各曲について、Jazz風だの、昭和歌謡風だの、テクノ風だの、形容しようと思えばできますが、そんな分類が虚しくなるくらい、多くの音楽のミックスぶりが素晴らしいです。
 異論を承知で言うと、聴いてるうちにライ・クーダーの音楽を思い浮かべました。「チキン・スキン・ミュージック」あたりが好きな人が本作を聴いたらどんな感想をもつでしょう。

アートワークは素晴らしく、上質紙による綴じ込みのブックレットは、細野氏の序文、コシミハル嬢との対談の他、各曲の歌詞、関連写真付き。さらには曲毎に細野さんが簡潔なコメント寄せていて、見てて楽しい気分になります。

Fs_1947_3

 全12曲で、40分ちょい。CD時代になって、1ディスクあたりの収録可能時間がアナログ盤の倍近くになったわけですが、私にはこのくらいの長さがちょうど良いです。

●アマゾンの「DEEP DIVE」というコーナーに興味深いインタビューが載ってます(でも、文章はちゃんと校正しましょうね)。

 日本のポップ・ミュージックの至宝ですわ。

2007.10.03

ニッポンロックアーカイヴス復刻シリーズで THE APRYL FOOL を聴く

日本コロンビアによる日本のロック黎明期の重要盤紙ジャケ復刻シリーズ「ニッポンロックアーカイヴス」というのが始まりました。怠け者の私は渋谷のCD屋さんの陳列を見て初めて知りましたが。

 自分の食指が動いたのは1枚。THE APRYL FOOL のデビューアルバムにして最後のアルバム、APRYL FOOL.
 理由は単純で細野さんが参加してるから。

Aprylfool

 ジュウェル・ケース盤は、すでに94年に出ていて今も在庫ありのようですが、怠け者の私は全然知りませんでした(ガク)。

 メンバーは、小坂忠(vo)、菊池英二(g)、ヒロ柳田(Key)、細野晴臣(b)、松本隆(ds)。

発売は1969年9月ですが、聴いてみてびっくり。もろサイケデリック・ロックだったので。

 裏表のカヴァー写真が、エリオット・ランディ(Elliott Landy)が68年にウッドストックで撮った The Band の一連の写真に雰囲気が良く似ていたので、てっきり、もっとDown to Earth なサウンドかと勝手に思いこんでしまいました。ちなみに、アルバムに使われている写真は荒木経惟氏によるもの。

 楽曲・演奏のクオリティは非常に高く、同時代の米英のサイケデリック・ロック系のバンドに比べて遜色はないです(と言いつつ、そっち系の音楽はあまり知らんですが・・)。
 当時の日本にアメリカ同様のサイケデリック・ムーブメントが存在したかは微妙、というか「ノー」だと思いますが、少なくとも、作品は完全に同時代のロックシーンの音でびっくりしました。

 日本語詩は一曲のみ。ディランの Pledging My Time のカヴァー以外はオリジナル曲。英語詩曲での小坂忠のヴォーカルが上手いのも驚き。

●ストレンジ・デイズの山田順一氏による付属の解説によると、細野、松本はあとからバンドに加わっており、バンドのサウンドは2人以外のメンバーの指向で決まったもののようです。この後、2人が若干の曲折を経て「はっぴいえんど」に至るのはご存じの通り。
 
 解説は今回の復刻にあたってあらためて書かれたものですが、非常によく書かれていて、このアルバムについてほとんど無知だった私は大変勉強になりましたです。

表カヴァーの写真は、ランディによる The Band のこの写真と非常に雰囲気が似てますが、当時のメンバーや荒木氏はランディの写真を知っていたのでしょうか。知らずにこれらの写真が撮られてしまったのだとしたら、ちょっと驚きというか不思議というか・・・・

 ということで、私には色々と驚きの1枚でありました。

2007.07.29

「細野晴臣と地球の仲間たち」に行く

●行ってまいりました。7月28日、日比谷野外音楽堂。
 国内の野外公演なんて、いつ以来でしょう。隣に居るのが娘からオヤジに変わりましたw

Hosonotribute_2

 サブタイトルが「~空飛ぶ円盤飛来60周年・夏の音楽祭~」。ようするに、細野さんの還暦記念コンサートです(笑)。
 前半90分ほどが、春先に出たトリビュートアルバム参加ミュージシャンのセット。休憩はさんで後半1時間ちょいが細野さんのバンドのセット。

●オープニング担当が竹中直人(笑)。続いてYMOの三人が登場してご挨拶。
 薄暮の蒸し暑くけだるい野音に響いた栄えある一曲目は、ストリングス付き、ヴァン・ダイク・パークス指揮、ゲスト・ヴォーカルがサンディーの「イエロー・マジック・カーニバル」という超豪華セット・・・・ですが、拍子抜けするほど、まったり始まりました。

 先に後半の細野バンドについてお話すると、同じことの繰り返しがキライな細野さんらしく、今度はカントリーで(笑)、9月発売の、ハリー・ホソノ&ワールドシャイネスによる FLYING SAUCER 1947 を先だって生でご披露した模様です。「Pom Pom 蒸気」 もガラッと変わってカントリーアレンジ。

 途中、ヴァン・ダイク・パークスが加わって、なんと Discover America 収録の The Four Mills Brothers ご披露。ヴォーカルはヴァン・ダイク爺。これを人前で歌うの初めてだそうで。しかも原曲からがらっと変わって、仰天のどカントリーアレンジ。たしかこの曲では坂本龍一がキーボードに参加。
 ヴァン・ダイク・パークス、64才。ファースト・アルバムの頃のインテリ風美青年は、猫背で歩く小太りのおじいちゃんになってました。

 「さっ、早く終わらせて帰ろ」など細野ジョーク連発でしたが、アンコール最後は、当夜参加のミュージシャン総参加で演奏の、「さよならアメリカ さよならニッポン」。ヴァン・ダイク・パークスはアコーディオン弾きまくりですよ、って、くーったまらん状態。
 今回ヴァン・ダイク出演なので、当然彼がプロデュースしたはっぴいえんどのラスト作 HAPPY END からの曲も期待してました。「さよなら~」は、アルバムでは大滝詠一氏がヴォーカルだったんで、「うーん、やるかな・・・」でしたが、やってくれました。

 その後、みんなで、HAPPY BIRTHDAY を歌って、バースデーケーキが登場して大団円。 
 セットリスト書きたいところですが、備忘録代わり?に回した○○の○○○が抜けてたので(泣)書けません。

●怠け物の私がほとんど知らない、若いミュージシャン中心の前半のトリビュートセットも、まったりと楽しめました。ただし、披露されたのはアルバムの全曲でなく、10セットのみ。

細野晴臣トリビュートアルバム
細野晴臣トリビュートアルバム

 皆良かったですが、一曲だけ挙げれば、ワールドスタンダード + 小池光子の「三時の子守唄」。小池光子の声、ほんと素晴らしいです。蝉時雨+隅田川花火大会取材ヘリの爆ノイズに負けず、美しく響きました。
 それにしても、この曲、こんな奇麗な曲だったのですなあ・・・

 セット・チェンジの合間に、竹中直人+高橋幸宏の漫才コンビなどもあり(笑)。
 
●パンフは3500円でしたが、内容が濃くなかなか面白いです。入場時に配られた団扇には、WE ARE NOT ALONE 2007.07.28 の文字が。

Hosono_uchiwa

 うーん、イイ晩でした。よかったなぁ・・・幸せ。

(追記)
 会場でメモっておいた前半のセットです。演奏者はトリビュートアルバムをご参照。
 「終りの季節」は、原田郁子が FUJI ROCK に出演のためイシイモモコに変わり、モモコちゃん演奏後、思わず「郁子ちゃん、ありがとねー」(笑)

「イエロー・マジック・カーニバル」
「風来坊」
「ミッドナイト・トレイン」
「終りの季節」
「ブラック・ピーナッツ」
「北京ダック」
<竹中直人ギャグ>
「日本の人」
「三時の子守唄」
<竹中直人ギャグ>
「Turn Turn」
「風の谷のナウシカ」

撮影用のカメラが数台あり、マイクが林立してたので、そのうち映像で拝めるでしょう。

2007.06.30

サディスティック・ミカ・バンド LIVE in Tokyo を聴く

●発売から、ちょっと経ちましたが、生見した1人として、触れないわけにはいきません。3月8日のNHKホールでの再々結成公演のライブ盤

LIVE in Tokyo
LIVE in Tokyo

 当夜のライブが2枚と、75年9月21日共立講堂における初代ミカ時代のライブ1枚の計3CD

 演奏された曲はすべて収録。ただし、機材トラブル(中間のマンドリン・ソロがまったく聞こえなかったためやり直し)で2回演奏された King fall (2度目は「タイムマシン」の前に演奏)はもちろん1つだけ収録。

音質は、オフィシャルですから当然、完璧サウンド・ボード・・と言いたいところですが、サウンドが中低域にかけて分厚い仕上がりになってます。
 私的には、ミキシング・スタジオで聴くならともかく、一般のご家庭で聴くにはかなり違和感のある音仕上げと感じました。まあ、この辺は好みもあるでしょうけれど。

 ゲネプロ、本番共にかなりあったMC(黒船レコーディング時の回顧話や今回のレコーディングの裏話等々)は、すべてバッサリとカットされてます。これは何度も聴くCDの性格上仕方がないところでしょう。でもかなり面白かったんですよん、あのMCの数々。奥田民生登場シーンのやりとりあたりはもうちょっと残しても良かったんではないかと。
 その他、若干の編集もあり、NARKISSOS終結部から、高中のソロに移っていく箇所の拍手は明らかに本番の時とは違います。他にも聴き比べれば見つかると思います.......何と聴き比べるんでしょう(自爆)。

ボーナス・ディスクは Official Historical Bootleg とクレジットされており文字通り公式海賊盤で、ブート雑誌風にいうと「当時としては良好な」オーディエンス録音です。
 当時のオーディエンス録音によくあるように曲間はカット。曲は「黒船」収録曲中心。秋川リサがオープニングのMCを務めているのにニンマリした人はかなりのオッサンです(11PM....)。ベースは後藤次利に替わってます。

 音質が音質ですし、ライブは生ものなので即断するのもどうかと思いますが、Live In London で聴ける、直後のイギリスツアーの凄まじい演奏に比べるとちょっと緩いところがあり(特に前半)、逆に言うと、たった1ヶ月足らずの間にバンドっつうのは変わるもんだなと。
 とはいえ、終盤立て続けに演奏される「何かが海をやってくる」「黒船」「塀までひとっとび」は、渡英前にしてすでにかなり強烈です。

 録音者は微妙に伏せられていて、recorded....by whom may concern on the night before they flew to London....とあります。ちょっと変な英語ですね。どうでもいいすけど(笑)。

コンサートの映像は、コンプリートではないものの WOWOW で5月に放送済みです(6月27日に再放送あり)。

 残すは、今秋、シネカノンから公開予定のドキュメント映画です。加藤和彦氏曰く、映画「Let It Be」のように見られたくないようなところも出して貰っちゃう覚悟だそうで。あのメンバーが末期Fab4のように喧嘩してるとはとても思えませんが。

 当夜のルポについてご興味ある方は、以前書いたこの辺のエントリーから遡ってご覧ください。音だけでは分かりにくい、どの曲で木村カエラが参加してるかも書いてあります。

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アルバム(作ってみました)