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2014.08.04

Eric Clapton & Friends: The Breeze (An Appreciation of JJ Cale) を聴く

Ecbreeze_2●楽しみだったクラプトンのJJ. ケイル(1938-2013)へのトリビュート・アルバム The Breeze (An Appreciation of JJ Cale) が届きました。繰り返し聴いてますが、いいですね。全16曲。

●発売までに何度も見ていた印象的な表カバーのイラストは貞本義行氏でした(ブックレットに記載があります)。ECの Pilgrim のカバーのイラストを描いた人、というよりエヴァンゲリオンの人といった方が世間では通るんでしょうか。ブックレット裏面の Special thanks に Udo Artists, Inc と表記があるので、最初はウドーが何を手伝ったのか不思議に思ったのですが、Pilgrim の時と同じく、貞本氏への作画依頼のコーディネイトをウドーが担当したのでしょう。Pilgrim のカバーはあまり好きじゃないのですが、これはいいなあ。

●ECは全トラックで弾いてますが、他の参加メンバーはドラムはジム・ケルトナー、ベースはネイザン・イーストで固定のようです。ただし、Additional Drums という表記もあって、その数名の中にJ. オールデイカーの名もあり。EC以外にギター弾いてるのはペダル・スティールのグレッグ・リースを入れて12人。誰がどのトラックで弾いているか、ちゃんと記載されているので助かります。

●プロデューサーは Old Sock から引き続きサイモン・クライミー。音作りは Old Sock にそっくり。特定の楽器を際立たせるとか、クラプトンのギターだけを目立たせるとかは絶対にしない(もっとギターを目立つようにして、と感じる人もいるでしょうけど)。ものすごく緻密なのに、すべての楽器が全体のアンサンブルの中にバランスよく融け合ってる感じ。もっと参加者の「個」の違いを浮き立たせて欲しいと思う人もいるでしょうけど。クライミー自身が担当した Drum Programming という表記もありますが、ギミックな箇所はまったくなし。ほんと才人です。

●USAのAmazonで面白いメイキング映像が見れますが、驚いたのが、デレク・トラックスが参加したあの06/07年のECツアー中、唯一JJ.ケイルがステージに登場したサン・ディエゴ公演(2007年3月15日)の映像が所々断片的に入ってたこと。全部見せて~(笑)

●収録曲のうち、Someday(マーク・ノップラー)、Songbird(ウィリー・ネルソン)、Train To Nowhere(EC、マーク・ノップラー、ドン・ホワイト)の3曲は未発表曲。

 みんな、JJみたいな歌い方をしてて、微笑ましいです。Cajun Moon のボーカルはクラプトンですが、ダブル・トラックみたいに聴こえるボーカルはJJとハモってるみたいに聞こえます。どうすればこんな歌(音)にできるのか不思議。ほとんどの曲が2、3分台で終わっていて、あっという間にフェイド・アウトしてしまう曲が多いのもJJぽいというか。Cajun Moon なんてECの2ndソロが始まった途端にフェイド・アウトされていくので、オイオイって感じになりますが、JJ. ケイルという人の作った音楽の枠というか流儀に従えばそれで正しいのでしょう。

●EC以外のボーカル(トム・ペティ、マーク・ノップラー、ジョン・メイヤー、ドン・ホワイト、ウィリー・ネルソン)は皆素晴らしく、自分はECの歌より彼らの歌に魅せられたかも。自分のアルバムでも Call Me The Breeze を歌ってたメイヤーの Magnolia なんて予想以上に嵌ってます。独特の悪ガキぽい感じのはずのトム・ペティも全然浮いてないというか、まるで「JJフィルター」かけたみたいな歌で、ブラインドで聴かせたら誰が歌ってるのか分からないのではないですか。

 ウィリー・ネルソンの歌はもう別格で、未発表曲ということが信じられないSongbird(デヴィッド・リンドレイがラップ・スティール弾いてます)なんて3分切る長さなのに、JJのちょっとこじんまりとした音楽を遥かに超える彫りの深い巨大な音楽になっていて、茫然と聴き惚れてしまいます(こういう歌はJJの音楽じゃないと思う人もいるでしょう)。ドン・ホワイトの歌う I'll Be There は節回しが演歌みたいになっててちょっと可笑しい。

●各人のギターも、派手に目立つようなソロがないからこそ逆に面白いというか、ECが歌う Since You Said Goodbye のスライド(JJのオリジナルとよく似てます)は最初デレク・トラックスかなと思ってクレジット見たらドイル・ブラムホールでした。ECとトム・ペティのダブル・ボーカルの I Got The Same Old Blues でのECの歪んだ音色の格好いいソロは、オブリガートの延長でそのまま余裕で弾いてる感じ。同曲でギター弾いてるレジー・ヤングも音数は少ないですが、彼としか言いようのない音が聴けます。 I'll Be There でのECのドブロや、アルバート・リーのこれまた彼としか言いようのないソロとか、The Old Man and Meでのグレッグ・リースのペダル・スティール等々…ほんと楽しいです。

●プロモを兼ねたインタビューを基にした記事が色々と出てますが、The San Diego Union-Tribune紙に載った記事(Eric Clapton speaks up for J.J. Cale)によると、クラプトンは去年の8月のJJの葬儀に向かう時にすでにこのプロジェクトを実行しようと思っていて、飛行機の中ではどうすればトリビュートにふさわしい内容にできるかずっと考えていたそうです。葬儀の際にJJの伴侶でバンドメンバーだったクリスティン・レイクランドとマネージャーにこのプロジェクトについて話した後は、(嫁さんの故郷である)オハイオの自分のスタジオに行き、2週間で24曲ほど作り上げたとのこと。レコーディングに先立って、レイクランドから未発表曲を収めたCDを渡されていて、アルバム収録の3曲の未発表曲はそれが基になったと思われます。

 その後の作業は9月にLAで(リンク先のインタビューでは最終仕上げは英国でとのこと)。ゲストの部分はそれぞれ別スタジオ録り。作業は、最初にサイモン・クライミーがPro-Tools上で、JJの曲に少しずつキーボード、ギター、ドラムを重ねる作業をしてからJJの部分を除去。そうして作った複写(facsimile)を使って、同じキー、同じ長さで演奏し、すべての楽器を入れ替えてしまったそうです(自分はレコーディングの技術や工程のことはまったくわからないので誤解があるかも)。曲の長さがオリジナルとだいたい同じ(少し長め)になった理由がわかりました。

 クラプトン曰く「JJのように歌おうとしたけど、別の物を作り上げた達成感もある」(I try to sing like John, but I still felt we got to a place where we achieved other things.)ということです。平凡かもしれないけどこのアルバムの出来をシンプルに表している言葉かなと。常にレイクランドの確認を取るように作業を進めていったそうですが、そういうところは律儀で偉いです。

●JJ. ケイルという人は、毎日店の同じ場所に立って蕎麦を打ち続ける蕎麦屋のオヤジというか、そういうことを黙々と何十年も続けるような、限りなく控えめだけど、仕事の跡にはしっかりと個人の名前が刻まれてるような、そんな人だったのでしょう。クラプトンはそういう生き方に憧れるのかもしれないけど、あなたはそういう生き方をするにはあまりにも派手でスパーブな才能を持ちすぎてます。最近引きこもり願望出てるみたいですけど(笑)。

●でも、いいアルバム作ってくれました。天に召された友人と、残された人のためにこんなことができるなんて立派です。

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