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2013年8月の記事

2013.08.25

テデスキ・トラックス・バンドのスタジオ録音第2作 Made Up Mind

●2011年6月の Revelator 以来、2年振り2作目のスタジオ録音。全11曲。

Made Up Mind
Made Up Mind

●ライブではカッコいいカバー曲で唸らせてくれるTTBですが、1作目のRevelator 同様すべて自作曲。録音は、デレクがフロリダ、ジャクソンヴィルの自宅内に所有してるスワンプ・ラーガ・スタジオ。デレクとジム・スコットの共同プロデュースで、ボブ・ルドウィッグのマスタリングというのは前作同様。エンジニア陣も同じ。録音時期は不明。

●ベースのオーテイル・バーブリッジが抜けてから、ツアー毎に別々のベース・プレイヤーが参加してたので、本作では誰がベースを弾いてるのだろうと思ったのですが、ツアー同様に複数のプレイヤーが弾き分けてました。ピノ・パラディーノが最多の5曲で、バキチ・クマロが2曲。他はデイブ・モンジー(2曲)とジョージ・リーフ(1曲)という人。ツアーはともかく、録音ですら固定メンバーにしないというのは、オーテイルが戻れる日を待ってるということなんでしょうか。ブックレットの写真もこれらベース奏者抜きの10人です。

●前作よりもさらにバンドのアンサンブルの密度が濃くなってる印象。もちろんデレクのソロもオブリガートも圧倒的に素晴らしいのですが、バンド全体のコレクティブな密度の濃さはすごいです。デレク・トラックス1人に依存してた感のあった初期のデレク・トラックス・バンドとの差は歴然。

●リリースに先立って無料配布された、仲良しのドイル・ブラムホールとの共作 Part of Me はモータウンのヒット曲のような人懐っこさですぐに耳に馴染むし、シンプルなリフで始まる最初のアルバム・タイトル曲 Made Up Mind にもグイグイ惹き込まれてしまうんですが、耳馴染みの良い曲はむしろ前作より少ない印象です。

 でも最初は地味に聞こえる曲もジワジワ効いてきまっせ。もう一つのドイルとの共作 All That I Need は、あっさりした曲かと思ったらコーラス部はけっこうキャッチャーでもろドイルという感じ(でもドイルが歌ったらもっと地味にしかならないでしょう)。ブリッジ前後のデレクのソロは短めかなと思ったら、後半でとんでもないソロが聴けて唖然とします。もう異常なレベルのソロ。

●本作の Whiskey Legs、The Storm といった曲や、ライブ盤に入っていた Nobody's Free のようなDTBやオールマンでは聴けないような、ハードロック風のヘビーな曲をやるのもTTBの特徴ですが、これって誰の志向が反映してるんでしょう?

 TTBは各曲の作者もほとんど共作名義だし(しかもすべての曲にメンバー以外の人が関与)、演奏同様、曲作りもコレクティブで誰の色なのかすぐに分からないのは興味深いです。スローな3曲(どれも素晴らしい)はすべて、TTBの隠れたコア・メンバーのエリック・クラズノが関わっていて、Sweet and Low は明らかにクラズノの色が出てるんでしょうけど。

●シングル・コードでヘビーなソロが延々と続くエンディング(ちょっとSunshine of Your Love を思い出しました)を持つ The Storm の後は、一転、クラズノ&デヴィッド・グッター共作の穏やかな曲 Calling Out To You で本編終了。

 Calling Out To You は、全曲中唯一、作曲にデレクとスーザンは関わっていない代わりに、演奏がデレクとスーザンのみで他のメンバー抜きなのも唯一。楽器はデレクの、右chアコギ、左chリゾネーターのみというシンプルさ。歌詞もスピリチュアルで良いし、最後の曲に相応しい良い感じで終わるので、このあとにボーナストラック(輸入盤には入ってません)が続くのはかなり変です。色んな曲が聴けるのは有難いんですけどねえ。

●スーザンの歌は、凡庸なシンガーならコピペみたいに同じように歌って済ましちゃうような部分も表情が違ったり、同一歌詞のリピートをニュアンスを変えて歌ったりと、単純に迫力の人だけではないです。ヴォーカル向きとは思えないような器楽的な難しいメロディーをこなしたり。歌詞を見ながら歌に集中してじっくり聴きたいですね。Whiskey Legs ではスーザンもギターとしてクレジットされてますけど、途中の交互に応酬し合うソロが彼女ならすごいです。

●YouTube のTTB公式アカウントには、Made Up Mind Studio Series という本アルバム収録曲のエピソードを、デレクとスーザンが曲毎に振り返ってる面白い動画があるのでどうぞ。コフィのフルートソロが聴ける Idle Wind はワンテイクのライブ録りだそうです。ひぇ〜。

●とにかく、とてつもないバンド。2012年の来日公演は超弩級、異次元レベルでした。数コーラスに渡る長さの、大きなクライマックスを作るようなデレクのソロはスタジオ録音では聴けないし、ホーン隊の芝居っけのある面白さはライブでしか見れません。早くまた来てください。

2013.08.04

ガース・ハドソンのビルボード東京公演を観る

Garthbbl2●8月2日に行われた、ガース・ハドソンのビルボード東京公演を見て来ました。私の見たのは19時からのファースト・ステージ。ガースのバンドは、今年のフジロックに出た後、ビルボード大阪で演奏してから、ビルボード東京というスケジュールでした。

 お客さんは良く入っていて、特にセカンド・ステージは全席完売表示。ガースはちょうどこの日76歳の誕生日でしたが、公式サイトには、Garth's last performance of his 75th year!と書いてあります。

●ザ・バンドの頃から長年連れ添っている嫁さんのモード・ハドソンをヴォーカルにした6人編成。嫁さん以外は、打楽器は2人(Ernesto "Ernie" Colon, Steve Sacco)、ギター&ベース1人(Paul Rigby)、キーボード&サックス&ベース持ち替え1人(Marty Grebb)。打楽器だけでステージの4割くらいを占拠。

 嫁さんのモードは車椅子に大きな杖を持っていて、衣装も黒ずくめなので魔法使いのお婆さんみたい。ガースは左奥に位置していて、楽器は正面に2段重ねのシンセ、右にアップライト・ピアノ、左にオルガンがあって、ガースをコの字型に囲む感じ。嫁さん同様に黒ずくめの衣装に帽子、ヒゲもじゃなので表情はほとんど分かりません。

●1時間ちょっとのステージで演奏したのは8曲。うち、ザ・バンドの曲が Don't Do It、The Wheel's On Fire、It Makes No Difference、Chest Fever、The Weight の5曲。他はファンク風1曲(ロビー抜きザ・バンドの1作目「ジェリコ」に収録の Move To Japan でした)、ラテン1曲。それから、知らない曲でしたが、帰宅してから歌詞を頼りに調べてみたら Mink DeVille というバンドの Something Beautiful Dying というタイトルのとても美しい曲を1曲めに演奏してました。

●ショーとしての出来やバンドのクオリティは今ひとつという印象で、このバンドを受け止めるにはガースへの愛が必要かも、と思いましたが、主に曲の冒頭でやる、形式の自由なガースの即興的な無伴奏ソロは非常に魅力的で印象に残りました。私はそれで十分。というかガースばかり見てたので他のメンバーが何してたかあまり分かりませんのです。

 お約束ではありますが Chest Fever 冒頭のソロでは、最初に正面のキーボードを弾いてからそのまま体を移動して右のオルガンに移るという演奏で、内容もバッハのトッカータとフーガからの引用を含んだ、バッハの幻想曲みたいで素晴らしかったです。あらためてこの人の音楽のバックボーンの広さ、深さを思い知らされました。演奏後に正面を向こうとして足が抜けなくなって、笑いを取ってましたけど。

 The Weight の前にはピアノで My Old Kentucky Home を静かに演奏したのですが、以前彼が Song to Soul という番組に出た時に、賛美歌風のパッセージを弾きながら、この曲はアメリカ音楽の色んな伝統の中から生まれてきたんだよ、と語っていたのを思い出したのでした。

●ステージ上のガースの挙動は非常におかしく、ザ・バンド時代は寡黙な哲学者然としたガースでしたが、今のガースは仙人というか変人のよう。Wheel's on Fire ではアコーディオンを弾いたのですが、演奏前に何かうつむいて足元でもぞもぞしてると思ったら、アコーディオンを付けようとしてたのでした。結局は恥ずかしそうに後ろを向いて、途中上着を1つ脱いでアコーディオンを付けたのですが、いったいアコーディオン付けるのに何分かかるんだという感じ。

 別の場面では、立ったまま片手をキーボードの上に置いて身を支えるようにずーっとフリーズしていて(笑)、お歳がお歳ですから具合悪くなって一瞬そのままぶっ倒れるのかと思ったのでした。最初ステージに登場する時も、先に他のメンバーが演奏を始めてからこそこそ気付かれないようにステージに上がるという感じ。とにかく、動作がスローモーションのようで彼の中ではまったく一般人とは別の時間が流れているんでしょう。車の運転をするそうなので、ちゃんと別の市民モードもあるんでしょうけど(笑)。

 彼は、キーボードに覆いかぶさるように身をかがめて演奏するので、平土間の席からは彼のこうした変な挙動はあまり良く見えなかったかもしれません。

●ちょうど、この日はガースの76歳の誕生日。最後に嫁さんから「今日はガースの誕生日です」と言葉があり、バンドの演奏と一緒に、場内の皆で、Happy Birthday To You の合唱をした場面はちょっとウルッと来ました。

 プロの演奏家から尊敬される人なので、2公演ともプロの方々が見に来ていたということですが、特にセカンド・ステージはハッピー・バースデイの場面で、同じくフジロックからビルボードというスケジュールで前日東京でショーをし、この日は客席にいたダニエル・ラノワがバースデイ・ケーキを持って登場。一緒に録音、共演したことのある佐野元春をステージに呼びあげて、ラノワのギター、佐野元春のコーラスで I Shall Be Released を演奏したそうです。私はファースト・ショーだったのでそのシーンに立ち会えなくて残念。こればかりは運なので。

●そんなに多くを期待せず、最愛のザ・バンドの奏者の生姿を30年ぶりに拝んでおこう位の気持ちで見に行ったのですが、幸福感に包まれて帰ったのでした。ガースの生演奏がまた見れるのかどうか分かりませんが、彼らが、日本ツアーは楽しかったね、という気持ちに包まれて帰国してくれたのならそれで良いかな。うん。

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