リヴォン・ヘルムのトリビュート公演 Love for Levon を見て、ちょっと思った。
●ブルーレイ(2CD付き)が届いたので見ました。去年の10月3日に行われた公演の全曲のフル収録と思います。収録曲はこちらに載ってます。
Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]
●このトリビュートではThe All Star Bandという名称のハウスバンドが編成されていて、ディレクターはリヴォンの晩年の活動を支えたラリー・キャンベルとベース担当のドン・ウォズ。ギターに現在クラプトンのバンドに参加してツアー中のグレッグ・リースがいます(ペダル・スティールは弾いてません)。
ハウスバンドが出ずっぱりというわけではなく、リヴォン・ヘルム・バンドがバッキングをする場面もあります。ハウス・バンドが実質2つという感じ。
ロビー・ロバートソンはもちろんいませんが、ガース・ハドソンは数曲で登場します。ザ・バンドのライブ盤「ロック・オブ・エイジス」や「ラスト・ワルツ」にも参加してたハワード・ジョンソンが、50年以上経ったこの公演でもホーン隊の中で元気にチューバやバリトン・サックス吹いてます。
リリース前に米PBSで放送されていて、その告知映像がこちら。
●出演者はすんごい豪華。それだけリヴォン・ヘルムという人が尊敬されてたということなのでしょう。あちらでの訃報も Legend とかいう見出しついてましたし。
派手な演出なし。オープニングでウォーレン・ヘインズがひょこっと出てきて歌い慣れてる The Shape I'm In サクっと歌ったと思ったら、そこにアコースティック・ギター一本持ったグレッグ・オールマンがひょこっと加わって Long Black Veil 歌ったり、そっち系が好きな人は冒頭からニヤニヤします。次が去年日本に来たヨーマ・コウコネン、って今はいつなんだ。
自分の持ち歌のようにきっちり歌えてる人もいれば、急仕上げみたいない人もいたり(歌詞をプロンプター頼りの人も)。Life Is A Carnival をピアノ弾きながら自分の曲みたいに歌うアラン・トゥーサンは元々この曲の編曲に関わっているのだから当然とはいえ流石です。Wide River To Cross を歌うロジャー・ウォーターズは完全に自分の世界に染め上げてしまってる感じで、別の意味で流石。Tennessee Jed でメインにクレジットされてるのはジョン・メイヤーですが、歌ってるのはラリー・キャンベルでちょっと残念(ラリーの歌も悪くないですが)。
●ラストの全員登場の The Weight の歌い出しはメイヴィス・ステイプルズですが、「ラスト・ワルツ」に参加した人の中で今回も出演している人ってメイヴィスだけ。ウィンターランドでの「ラスト・ワルツ」公演にライブ出演した人に限ればゼロで(ホーンのハワード・ジョンソンを除く)、あらためて時の流れを感じてしまいます。同曲でソロを弾いてるロバート・ランドルフは正直暴れすぎですよ、あんた(爆笑)。
●聴き応えのある、いいトリビュートだと思いますが、その最大の貢献は、多くを占めるロビー・ロバートソンの楽曲なのは見ててちょっと複雑な感じ。演奏されてる Tears of Rage や Whispering Pines はそもそもリヴォンがリード・ヴォーカルの曲じゃないのだから、リヴォン・トリビュートというよりザ・バンド・トリビュートです。
先日のグラミー賞授賞式でリヴォンへのトリビュート演奏があった時にも、ロビー・ロバートソンはいなかったわけですが、「終わらない確執。リヴォン・ヘルム夫人はグラミー・トリビュートへのロバートソンの参加を許さなかったのか」というタイトルのこちらの(推測含みの)記事を読むとリヴォンの怨念が家族(夫人)にまで引き継がれてしまってます。
ちなみに、ザ・バンドの楽曲について、ロビーが他のメンバーをさし置いて名声を独り占めにしてるのは公平じゃないとリヴォンは発言してますが、この点について、上の記事へのコメントで、晩年のリヴォンのバンドの番頭だったラリー・キャンベルの興味深い発言を引用してくれてる人がいます。
「リヴォンと曲を書いた僕の経験では、作曲に関して、彼は労を取ろうとはしなかった。僕らの共作曲で、曲を仕上げる作業は僕の仕事だった。」(”writing with Levon, my experience was, he wasn’t gonna do any labor where writing a song is concerned. The songs we’ve co-written, when it came down to constructing the song, that was my job.” )
ザ・バンドが、89年にカナダで、94年にアメリカでそれぞれ名声の殿堂入りしたときにも、他のメンバーたちはロビーと一緒に演奏することは厭わなかったことを考えると、リヴォン側のロビーに対する態度は頑なすぎると思う人もいるでしょう。
●晩年までロビーの書いた曲を歌い続けたリヴォン・ヘルムという人が、ロビー個人に対する忌避感情と、ロビーの曲を演奏することと、どう折り合いを付けてたのかなと、ふと思ったりもしました。
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