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2013年3月の記事

2013.03.24

リヴォン・ヘルムのトリビュート公演 Love for Levon を見て、ちょっと思った。

●ブルーレイ(2CD付き)が届いたので見ました。去年の10月3日に行われた公演の全曲のフル収録と思います。収録曲はこちらに載ってます。

Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]
Love for Levon: A Benefit to Save the Barn [Blu-ray] [Import]

●このトリビュートではThe All Star Bandという名称のハウスバンドが編成されていて、ディレクターはリヴォンの晩年の活動を支えたラリー・キャンベルとベース担当のドン・ウォズ。ギターに現在クラプトンのバンドに参加してツアー中のグレッグ・リースがいます(ペダル・スティールは弾いてません)。

 ハウスバンドが出ずっぱりというわけではなく、リヴォン・ヘルム・バンドがバッキングをする場面もあります。ハウス・バンドが実質2つという感じ。

 ロビー・ロバートソンはもちろんいませんが、ガース・ハドソンは数曲で登場します。ザ・バンドのライブ盤「ロック・オブ・エイジス」や「ラスト・ワルツ」にも参加してたハワード・ジョンソンが、50年以上経ったこの公演でもホーン隊の中で元気にチューバやバリトン・サックス吹いてます。

 リリース前に米PBSで放送されていて、その告知映像がこちら。

●出演者はすんごい豪華。それだけリヴォン・ヘルムという人が尊敬されてたということなのでしょう。あちらでの訃報も Legend とかいう見出しついてましたし。

 派手な演出なし。オープニングでウォーレン・ヘインズがひょこっと出てきて歌い慣れてる The Shape I'm In サクっと歌ったと思ったら、そこにアコースティック・ギター一本持ったグレッグ・オールマンがひょこっと加わって Long Black Veil 歌ったり、そっち系が好きな人は冒頭からニヤニヤします。次が去年日本に来たヨーマ・コウコネン、って今はいつなんだ。

 自分の持ち歌のようにきっちり歌えてる人もいれば、急仕上げみたいない人もいたり(歌詞をプロンプター頼りの人も)。Life Is A Carnival をピアノ弾きながら自分の曲みたいに歌うアラン・トゥーサンは元々この曲の編曲に関わっているのだから当然とはいえ流石です。Wide River To Cross を歌うロジャー・ウォーターズは完全に自分の世界に染め上げてしまってる感じで、別の意味で流石。Tennessee Jed でメインにクレジットされてるのはジョン・メイヤーですが、歌ってるのはラリー・キャンベルでちょっと残念(ラリーの歌も悪くないですが)。

●ラストの全員登場の The Weight の歌い出しはメイヴィス・ステイプルズですが、「ラスト・ワルツ」に参加した人の中で今回も出演している人ってメイヴィスだけ。ウィンターランドでの「ラスト・ワルツ」公演にライブ出演した人に限ればゼロで(ホーンのハワード・ジョンソンを除く)、あらためて時の流れを感じてしまいます。同曲でソロを弾いてるロバート・ランドルフは正直暴れすぎですよ、あんた(爆笑)。

●聴き応えのある、いいトリビュートだと思いますが、その最大の貢献は、多くを占めるロビー・ロバートソンの楽曲なのは見ててちょっと複雑な感じ。演奏されてる Tears of Rage や Whispering Pines はそもそもリヴォンがリード・ヴォーカルの曲じゃないのだから、リヴォン・トリビュートというよりザ・バンド・トリビュートです。

 先日のグラミー賞授賞式でリヴォンへのトリビュート演奏があった時にも、ロビー・ロバートソンはいなかったわけですが、「終わらない確執。リヴォン・ヘルム夫人はグラミー・トリビュートへのロバートソンの参加を許さなかったのか」というタイトルのこちらの(推測含みの)記事を読むとリヴォンの怨念が家族(夫人)にまで引き継がれてしまってます。

 ちなみに、ザ・バンドの楽曲について、ロビーが他のメンバーをさし置いて名声を独り占めにしてるのは公平じゃないとリヴォンは発言してますが、この点について、上の記事へのコメントで、晩年のリヴォンのバンドの番頭だったラリー・キャンベルの興味深い発言を引用してくれてる人がいます。

「リヴォンと曲を書いた僕の経験では、作曲に関して、彼は労を取ろうとはしなかった。僕らの共作曲で、曲を仕上げる作業は僕の仕事だった。」(”writing with Levon, my experience was, he wasn’t gonna do any labor where writing a song is concerned. The songs we’ve co-written, when it came down to constructing the song, that was my job.” )

 ザ・バンドが、89年にカナダで、94年にアメリカでそれぞれ名声の殿堂入りしたときにも、他のメンバーたちはロビーと一緒に演奏することは厭わなかったことを考えると、リヴォン側のロビーに対する態度は頑なすぎると思う人もいるでしょう。

●晩年までロビーの書いた曲を歌い続けたリヴォン・ヘルムという人が、ロビー個人に対する忌避感情と、ロビーの曲を演奏することと、どう折り合いを付けてたのかなと、ふと思ったりもしました。

2013.03.16

クラプトンの2013年USツアー始まる

●初日、アリゾナ州フェニックスでスタート。良い感じのセットじゃないですか。これなら見てみたい。1曲目のHello Old Friend はびっくり。知らずにいきなり見たら「おいおい、まじか。うひょひょ~」だったでしょう。昨年出たスローハンドのデラックス版に付いた77年のハマースミス・オデオン公演のオープナーでもありますが、聴いてるうちにやりたくなったのかな。

 頭の3曲はスライド・ギターが映える曲ですが、今回ECツアー初参加のグレッグ・リースのペダル・スティールを念頭に置いた選曲と思われます。Youtubeに上がってる Hello Old Friend の客撮り動画を見るとギターのリフはスライドではなく、ペダル・スティールが弾いてます。2006年の日本ツアーで披露され、一部ファンを狂喜させた Tell The Truth も、その後定番化し、スライド抜きのスカスカ演奏になるとだんだん萎えて来ましたが、今回はちょっと違う印象なんじゃないか期待しちゃいます。ファンなんて勝手なもんです。Wonderful Tonight はお座りセットのアコースティックでの演奏だそうです。

●新作からの披露は、Gotta Get Over と Goodnight Irene の2曲のみ。アルバムと違ってブルース色が濃いセット。後半のブルースはロバート・ジョンソンがずらり。ラストのジョー・コッカーも意外(というか誰も予想できない)ですが、一応クリス・ステイントンが作曲に関わってる曲です。曲想はECバンドにバッチリ合うと思うので早く聴いてみたいですね。動画で見れる久々の Sunshine of Your Love はカッコイイですね。Sheriff も過去のECバンドでは聴けなかった緻密なサウンドで面白いです。ダブル・キーボードかなり良いかも。聴き慣れた曲でも過去のどのツアーのものともサウンドが違います。

 ギターの方は・・・ツアーが進めばもうちょっと良くなると思いたい。でもお爺ちゃんだからあまり手厳しいことは言いたくない(笑)。

●キーボードで参加のポール・キャラックが2曲持ち歌披露の場を与えられます(追記:最後の曲のヴォーカルもキャラックなので3曲で歌ってます)。EC先生は自分のプロ・デビュー50周年ツアーだという自覚があまりないみたい。

●ドイルが番頭に入ると違いますね。セットが引き締まるというか。ずっと面倒見てあげてください。今回は舞台上手に立ってるんですね。

3月14日、U.S. Airways Center, Phoenix, Arizona

Hello Old Friend
My Father's Eyes
Tell the Truth
Gotta Get Over
Black Cat Bone
Got to Get Better in a Little While
Tempted (Paul Carrack)
I Shot the Sheriff

-sit down-
Driftin' Blues
Nobody Knows You When You're Down and Out
Tears in Heaven
Goodnight Irene
Wonderful Tonight

How Long (Paul Carrack)
Stones in My Passway
Love in Vain
Crossroads
Little Queen of Spades
Layla
Cocaine

-Encore-
Sunshine of Your Love
High Time We Went (Paul Carrack)



(追記)
 2日目のヒューストン公演の音源を聴いて内容を少し足しました。Layla がアコースティックになりGoodnight Ireneと入れ替え。Nobody Knows You は Lay Down Sally と入れ替え。

 Sheriff は素晴らしい出来。ヒューストンでセット入りした Lay Down Sally でのペダル・スティールのソロも良いです。Layla でのリース、キャラックのソロ・リレーもいいし。このメンバーなら Layla はアコースティックが面白いと思います。リースの参加は今ツアー最大のヒットでしょう。反面、ドイルは、後半のブルース曲でのソロ以外ではバッキングに徹してます。

2013.03.14

クラプトンの Old Sock をさっそく聴いてみた

●ジミ・ヘンドリックスの最後とされる公式アウトテイク集も面白かったですが、色々思い、何か書いてみたくなるのはやっぱりこの人。惚れた者の弱み。

Old Sock
Old Sock

 海の家のオジサンみたいなカバーだけど(裏カバーは冬の山小屋の管理人)、内容は素晴らしかった・・・見栄えとギャップありすぎ。

●すぐ分かるのはサウンドがものすごく緻密に作り込んであること。数回聴いたくらいじゃとても把握しきれないくらい緻密。ここは誰のソロ、次は誰のソロなんて単純なサウンドではなく、アンサンブルが重層的に重なり合うサウンド。なのにボテボテした分厚い感じがなくものすごく繊細。平凡なカバー曲集なんかでは絶対にないです。もちろんクラプトンだけでなせることではなく、他の共同プロデューサーたちの技によるところも大きいはず。一番の貢献者はやはりサイモン・クライミーか(ミキシングはクライミー1人でやってます)。

 それすら分からず「クラプトンのギターってさあ、もうあれなんだよね」とか言ってる人は、音楽を一面からしか聴けないただの未熟なダメな人、とはっきり言ってしまいましょう(こういう音楽が好きでないのはかまいませんけど)。今回、共同でプロデュースに復帰したサイモン・クライミーが担当した Pilgrim も作り込んだアルバムでしたが、Pilgrim にあったギミックぽさというか、楽器よりマシーンを感じさせるようなところが全くありません。

●とにかく、ものすごく幸福感の伝わってくるアルバム。音楽も詩も両方ともハッピー。タジ・マハールのハープが聴ける1曲目の Further On Down The Road から、ずーっとハッピー。Born To Lose のような涙ためて微笑む、みたいな曲も含めて。

 サンプルで全曲聴けるようになった時に、なんでレゲエが多いの?と単純に思いましたが、今の(というか少なくともこのアルバムを作っている時の)ECの中から自然に湧き出してくる幸福感とよく合うのがレゲエという音楽だったということなのではないですか。それは、コーラス部分がレゲエの Every Little Thing の後半で、EC娘たちの拙いけど可愛らしいコーラスが入ってくる部分を聴いても実感します(この3人娘コーラス効果はすごい)。ブルースでこの幸福感を出すのは不可能。ブルース求道者のたどり着いた境地がレゲエのオジサンかい、って、まあ良いでしょう(笑)。

●ギター・ソロは大げさなところがなくシンプルで本当に良いです。これまたレゲエの Till Your Well Runs Dry でのギター・ソロなんてあっさり弾いてるようでものすごくドラマチック。以前は何十小節もかけて力んで表現してたことを、数小節であっさりとやってる感じ。本アルバム中、多くの人が期待するようなヘビーなギターを弾いてるのはGotta Get Overですが、このアルバムの中ではそれすら異質に感じられてしまいます。

 2011年のソウル公演のシットダウン・セットで淡々とギブソンのセミアコを弾くクラプトンを見て(ツアーが進行するにつれて普通のアコースティック・ギターに変えてしまいましたが)、この人はもうクロスロードとかコカインとかで頑張ってギター弾かなくてもいいんじゃないかと思いましたけど、前作やこういうアルバムを聴くと私的にはだんだんその気持は強まります(楽理的、演奏技術的な分析は私にはできないので、その筋の方はいつものように後でこっそりおしえてください)。

●Still Got The Blues はこのアルバム中、唯一「闇」の見える曲。ストリングス付きのアレンジのせいもありますが、もうレイ・チャールズみたい。そこに被さるウィンウッドのB3オルガン。うーん、この曲苦手だったのに完全にやられました。レコード会社の中の方、これ上手くプロモートすれば売れますよ。日本人好みのマイナー曲想だし。「哀愁のヨーロッパ」とか「ホテル・カリフォルニア」を目指してみたらいかがですか。有線とかどうでしょう(笑)。

●収録曲の全タイトルが発表された時に分かった新曲2曲は、どちらもドイル・ブラムホール、ジャスティン・スタンレー、ニッカ・コスタの共作。要するにクラプトンの曲はこのアルバムに1曲もありません(ソロ後では、ブルース・アルバム以外史上初)。でも、今のクラプトンには、誰が作った曲か、いつ作られた曲か、自作曲が入ってるかなんてどうでもよいことなんだと思います。

 誰の曲か謎だった Angel はJ.J.ケイルの曲。Your One and Only Man はオーティス・レディングの曲でしたが、ここもタジ・マハールのハープ付きのレゲエ・アレンジでオリジナルとは似ても似つかない歌、演奏。真面目なオーティス・ファンが聴いたら怒るかも。でも、レゲエ・アレンジになっても、Take These Blues という歌詩で始まるサビの部分から漂ってくる匂いは紛れもなくオーティス。

●録音時期、場所、スタジオの表記は一切ないのがちょっと謎(参加ミュージシャンから想像するとたぶんLAのどこか)。旧作のアウトテイクが入ってたり、録音時期には幅があるのかもしれませんが、アルバム全体に不統一感はありません。

 参加ミュージシャン全員のクレジットはありますが、個々の曲での担当は不明。ドラムは当初伝えられたガッド、ケルトナーの2人だけではなく、エイブ・ラボリエル・Jr.、ヘンリー・スピネッティの他、マット・チェンバレンの名まであります。クリス・ステイントンはピアノは弾かず、クラヴィネット、フェンダー・ローズ、ウーリッツァー、B3だけを弾いてます。ウォルト・リッチモンドの弾くピアノはとても良くて、ツアーメンバーに入ってないのが残念(ごめんねクリス)。All of Me でマッカートニーが弾いてるベースが何かは聴いてのお楽しみ。ツアーメンバーにも入ってるグレッグ・リースのペダル・スティールはやはりかなり印象的。Still Got The Blues 冒頭でのウィンウッドのB3の存在感はもう圧倒的・・・・と書き出したらキリが無い。この曲のこれは誰だろうとか色々考えながら聴く楽しみ満載。

●おそらく、クラプトンという人が作ったアルバムの中で一番幸福感に満ちたアルバム。今の自分にはそういう音楽こそ、とてつもなく大きいです。ラストがペダル・スティールの美しい「我が恋はここに」って、もう完璧。終わった後の余韻も素晴らしい(この後にボーナストラックなんて入れるのは愚劣です)。恥ずかしいけど最初に通しで聴きながら何度もジーンとなりました。明るいポジティブな作品なのに。もしかしたら、今年の私的ベスト1にもう出会ってしまったかもしれないくらいの気分で聴いてます。しばらく、ずっと聴き続けそう。同時に、今まで同様Repriseレコードからのリリースだったらこういう作品は可能だったか、とちょっと考えてしまいました。偉いさんにもっとブルースやロック入れろとか言われたんじゃないかなと。

●今日から始まるUSツアーではどうなるんでしょうねえ。従来のショーとガラリと変わったらスゴいです。でも、巨大アリーナの大歓声の中でこのアルバムみたいなインティメイトな雰囲気を出すのは無理なので、たぶんいつものやつでしょう(笑)。

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