デレク&ザ・ドミノスの70年8月マーキー音源について
●最近、デレク&ザ・ドミノスが70年8月11日に、ロンドンのマーキー(Marquee)で行った公演の音源が、音に改良を施されてファイル共有サイトに上がりました。音源はここでseedされてます(要利用登録)。音源提供者は不本意でしょうけど、早くも複数のブートになってます。
●この音源自体は比較的良く知られたものだと思うのですが、今回はかなり聴きやすい音質に改善されていて一瞬別ソースじゃないかと思ったくらい。ギター、ヴォーカルがシャープな音質に生まれ変わってます。もちろん、あくまで当時の機材によるプライベート録音にしては、という留保が付きますが。
自分の従来聴いていた音源(左写真)では各パートがどんよりとボヤけた音で、モノラルなのに左右の出力バランスが均質でないため音が左に寄ってるという代物でしたが、こういう音質に生まれ変わらせてくれた方に感謝。これだけ聴きやすいと記録の確認ではなく、演奏を聴くという気持ちで味わえます。
●作業者の情報によると、この録音のマスターはUher社の5インチのオープンリール。新音源はそこからダビングした1stジェネレーションのカセット・テープが元になってるそうです。レイラの40周年版が出た時に、プロデューサーのレヴェンソンが、Marqueeと書かれたテープ箱(のコピー)を見たことがあると語ってましたが(こちらの(12)に書きました)、この5インチリールなのではないでしょうか。
●8月1日にロンドン郊外のラウンドハウスという会場からスタートし、22日まで13公演行われたたドミノス最初のツアーですが、当初1回の予定がチケット完売により1日2公演になったのが8月11日のマーキー公演。ここでも2公演分聴けます。ただし、演奏時間が短く、音源の残っている14日のモルヴァーン公演、18日のボーンマス公演の演奏曲数が8、9曲であることを考えるとフルセットではないのかなという気がします(あるいは2公演による短縮セット)
まだグループの活動最初期のため、ドミノスのオリジナルの持ち歌は Anyday とTell The Truth だけで、あとはクラプトンのソロアルバムの曲とカバー。後にドミノスとしての演奏レパートリーからは落ちてしまったウィットロックの曲 Country Life が演奏されてるのも面白いです。
●1stセットの1曲目 Roll It Over のイントロ部の即興的なソロ部分から、クリーム時代に戻ったかのような刺すような挑発的な演奏。演奏全体を通じてクラプトンのヴォーカルが下品スレスレにシャウト、吠えまくってます。Anyday の I'll see your smile の箇所の歌い方とかドミノスのスタジオ録音からは考えられないような歌いっぷり。これが歌うの嫌がってた気弱な人の歌でしょうか。あるいは変な物質でも体内に注入してるとか。
それはともかく、トレモロやベンドの鋭さとか、使用楽器の違いにも負うところが大きいのでしょうけれど(後述のようにレスポール使ってます)、公式盤で聴ける10月のフィルモア・イーストのライブ演奏とは演奏の傾向がかなり違っていて、ドミノスも最初期はこういう演奏をしていたという貴重な記録です。
2ndショーで、「偉大なジミ・ヘンドリックスに捧げます」と言ってジミの Little Wing をやってますが、この日から一月ほど後にジミが亡くなってることを思うと(9月18日死去)、聴いていてやはり感傷的な気持ちになります。
(余談ですが、ジミが亡くなった日のクラプトンとウィットロックの行動の記憶は、それぞれの自伝で微妙に食い違ってます)
●当時の貴重な回想話がたくさん出てくるウィットロックの自伝ですが、このUKツアーの面白い話はそれほど出てきません。初日の演奏中に客の喧嘩が始まって演奏を止めさせられたとか、ある会場のショーで車の故障のためボビーが遅刻、会場に着いたときには演奏はすでに始まっていてあわてて客席から舞台に上がった(笑)とかいうトホホ話ばかり。ただし、遅刻時にボビー抜きで Sunshine of Your Love を演奏していたというのはへーって感じでした。
●ウィットロックの自伝には、マーキー公演時の貴重な写真が2枚載っていて(下写真)、ロバーティの序文によると自伝のために撮影者が提供してくれたものだそうです。タンクトップ姿でレスポール・スペシャルというギターを弾く珍しいクラプトンの写真ですが、さっそくブートレッグに流用されてます。
この日の写真にはデラニー&ボニーのツアーでもよく使っていた黒いレスポールを弾いている写真も残ってますが、ギターに詳しい友人達の審議によると、1stショーがレスポール・スペシャル、2ndショーが黒レスポールを使っているのではないか、ということです(marsさん、Slunkyさん、ありがとう)
●元の音源はピッチが少し高いということで、ピッチ補正したというブートも買ってみましたが(左写真。Hot August Night - Mid Valley 723)、それでもクラプトンのヴォーカルは甲高く聞こえます。私は絶対音感はないですが、耳に自信のある方どうでしょう。
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コメント
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私のまわりには、DLやブート環境になくとも、Satoさんblogファンがいらっしゃいますので、お知らせしておきます。
Youtubeでよろしければフルに聴けますよん♪
http://www.youtube.com/watch?v=GR9Gdf_jEQs
投稿: Slunky | 2013.02.05 15:59
興味深い記事を読ませて頂きました♫
ドミノスのライブで「SUNSHINE OF YOUR LOVE」を演奏していたなんて驚きです。
ボビーがいないということはジャックのパートは誰が歌ったんでしょうかね!?
この日の音源が発掘されれば良いのですが。。。
投稿: 竹内水道管 | 2013.02.05 21:01
ギタ-で合わせてみましたがピッチは合ってました。あの声は本物ですね…それにしても凄い音源です。毎日,聞いてます。
投稿: Take | 2013.02.05 23:46
たまたま日曜日にラウンドハウスのすぐ近くまで行きました。カムデン・タウンのマーケットをそぞろ歩きしながら北に向かうと、目に入ってきます。ヴィクトリア時代の建物で、元々は蒸気機関車の修理場だったとのこと。その名のとおり、円型をしていて、どこか空飛ぶ円盤を連想させます。6〜70年代にかけて、イギリスの主だったミュージシャンはたいがいここに出演しています。70年ワイト島フェス以外では、ドアーズ唯一のイギリス公演が行われたのもここ(68/9)。80年代にクローズしてからは長らく放置同然でそこに姿を晒していましたが、21世紀に入って補修が行われ、ライヴや演劇の場として営業再開しました。
ロンドンにいたのは、シェファーズ・ブッシュ・エンパイアでファミリー40年ぶり、2夜限りの再結成公演を観るためでした。んも〜、よかったですぜ。あっしにとっては、クラプトン、ツェッペリン、ジョイ・ディヴィジョンと肩を並べるぐらい思い入れのあるアーティストなのもあって、思い出深いショウとなりました。
プログラムにオリメン4人のサインをもらえたこと、伝説のヴォーカリスト、ロジャー・チャップマン(英ロッカーでは、ジンジャー・ベイカーほどならずとも、気難しい、怖いキャラというイメージが流布している)と、楽屋出しなに立ち話して、即興のジョークで相手の笑いを勝ち取ったことは、あっしの勲章です(笑)。通りの向こう、駐車場に消えるまで笑い止まず、最後にはふり返って手まで振ってくれました。
え? ドミノズとどう関係がある? 最後のキーボード奏者、トニー・アシュトン(故人)がグループの名付け親だった、ってことで(笑)。
投稿: ブルー爺 | 2013.02.06 04:25
コメントありがとうございます。
>Slunkyさん
Youtubeでよろしければフルに聴けますよん♪
http://www.youtube.com/watch?v=GR9Gdf_jEQs
Youtube情報ありがとうございます。
未聴の方はぜひどうぞ。
>竹内水道管さん
ドミノスのライブで「SUNSHINE OF YOUR LOVE」を演奏していたなんて驚きです。 ボビーがいないということはジャックのパートは誰が歌ったんでしょうかね!? この日の音源が発掘されれば良いのですが。。。
そうなんです。ジャックパートは誰が?
ってクラプトンしかいないわけですが。笑
遅刻という間抜けな理由で、クラプトンvoのフルコーラス版が実現していたとしたら、ちょっと可笑しいですね。
>Takeさん
ギタ-で合わせてみましたがピッチは合ってました。あの声は本物ですね…それにしても凄い音源です。毎日,聞いてます。
ピッチ合ってましたか。わざわざギターで試していただきありがとうございます。
ドミノスの演奏に対するイメージが変わるような凄い音源ですね。
ミュージシャンの全貌を把握しようと思ったら公式音源だけでは限界があることを痛感します。
ブルー爺さんのRoundhouseの件、ちょっと?な点があるので、疑問含めてこのあとまた続けます。
投稿: Sato | 2013.02.08 18:49
ブルー爺さんの言われるRoundhouseですが。
ドミノス公演会場だったDagenhamのRoundhouse
http://en.wikipedia.org/wiki/Dagenham_Roundhouse
http://www.geograph.org.uk/photo/55407
と、
キャムデン北のChalk Farm Rd.沿いにあるRoundhouse
http://en.wikipedia.org/wiki/Roundhouse_(venue)
は別物なのではないでしょうか。
ドミノスがやったのは東ロンドンのDagenhamの方。
キャムデン北の改装されたRoundhouseは昔鉄道用のターンテーブルがあった場所だそうで建物もそのことを思わせます。
ボビーの自伝の記述には、それと似た記述があり紛らわしいのですが。
シェファーズブッシュ・エンパイアは一度拝んで見たいのですが、まだ生では未見です。くたばる前に一度訪れて見たいです。笑
今日はLittle Featかあ、いいなあ。
でした。
投稿: Sato | 2013.02.08 19:54
ナニナニ・・・あちゃー・・・
ラウンドハウスがふたつあったとは、今の今まで知らなんだ〜、あ知らなんだ♪
しかも下のリスト見たら、カムデン(正確にはひと駅北のチョークファーム)に出演していたとばかり自分が思い込んでいたのが、実はこっちのほうだったというのが結構あるんでやんの。
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_bands_that_played_at_Dagenham_Roundhouse
円くもないのにラウンドハウスたぁ、これ如何に。後発のブンザイで本家に恥ずかしくないのか、テメェ看板下ろせ。堕下南無阿弥陀仏。
シェファーズ・ブッシュ・エンパイアでライヴを観たのは、96年12月のピーター・グリーン以来。コージー・パウエルがワン・バスでシンプルに叩いておりました。間もなくして事故でお亡くなりになったので、私にはコージーの見納めになった場所でもあります。
投稿: ブルー爺 | 2013.02.09 08:58