Levon Helm Band / Ramble at The Ryman (DVD)
●リヴォン・ヘルム・バンドの2008年9月のライブ。収録はナッシュヴィルのカントリー音楽の聖地ライマン・オーディトリアム。CDでも出ていてそちらはグラミー賞取ってますが、私の持ってるのはDVDだけです。
リヴォン・ヘルム・バンドの演奏は、この5ヶ月前にMerle Festivalに出演した時のライブ音源が正式に発売されてますが(ここにちょっと書きました)、曲目はそれほどダブっていません。何より、リヴォン・ヘルムという人の晩年の活動が映像としてきちんと記録されたのは嬉しいです。
収録より3年経った2011年のリリースですが、リヴォンの声はこの翌年にオールマンの結成40周年ビーコン公演にゲスト出演したときには不安定で、昨年はもう歌える限界という感じでした。
●出たときに買って1回さらっと見ただけだったのですが、あらためて見直してみました。
アメリカのポピュラー音楽の伝統に根ざした、普通の素朴な音楽。リヴォンの声も当然病気後の声で往年の力強さはないです。リヴォンに思い入れのない人が見たら、爺さん率いる田舎バンドにしか見えないかもしれません。でも、こういう音楽こそ生き残る。ウィントン・マルサリスのようなインテリがやる頭でっかちな伝統回帰とは大違い。ここにそのまま伝統があるじゃないか、という感じ。別にウィントン嫌いじゃないですけど。
Merle Fest盤でも聴けた Ann Lee なんて三重唱に楽器はラリーのフィドルだけという素朴さ。その後に続く Rag Mama Rag は、この歌がどんな根っこの上に出来た歌か完全に実感させます。
Chest Fever の冒頭は、ザ・バンド好きにはガースのオルガン即興ソロでお馴染みですが、この盤のもいい感じ。見てない人もいると思うので内容は内緒にしておきます。
●Merle Fest盤同様リヴォンがすべてのヴォーカルを取るわけではなく、娘のエイミーやラリー・キャンベル、ブライアン・ミッチェルが歌う場面もあります。彼らは傑出した歌い手ではまったくないのでちょっと物足りない感じ。でも、最後に出てきて The Weight を歌うジョン・ハイアットの歌はやはり別格。流石です。
●Merle Festでも参加してたマンドリンのサム・ブッシュが途中から参加して、最後まで出ずっぱりで弾いてます。バックに徹していて目立つシーンは少しだけですが彼のマンドリン素晴らしいです。才人。
他にハープ、ヴォーカルが聴けるリトル・サミー・デイヴィス(この翌月心臓発作で倒れてます)、シェリル・クロウがゲスト参加。シェリルはリヴォンと Evangeline をデュエットしてて歌詞の記憶が怪しいですが、まあご愛敬。バディ・ミラーもずっと出てますが自分はこの人のことよく知りません。
●4人のホーン隊の付く大編成ですが、本当に普通のシンプルな音楽。Back to Memphis ですらベースはアップライトです。
これがグラミーというのはリヴォンに対する過剰リスペクトかなという気もしますが、もし自分がこの現場に居たら幸せな気分で帰ったと思うし、最後の The Weight では泣いたかもしれない。ステージ上の全員が本当に楽しそうで、かつてクラプトンが憧れた「ザ・バンド」というバンドの有り様を決めた核になったのはリヴォンだったのかも。
ドラムを叩くリヴォンの姿は文句なしに格好よく、ライマンの雰囲気も良く伝わってきます。
(写真はDVDからのキャプチャ)
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