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2011.09.03

ライ・クーダーの新作、Pull Up Some Dust & Sit Down

●出たばかりのライ・クーダーの新作です。タイトルは、「ホコリをはらい上げて、座れ」みたいな感じでよいのでしょうか。

Pull Up Some Dust and Sit Down
Pull Up Some Dust and Sit Down

●全14曲。すべてライの自作曲(1曲は共作)。ライ以外の録音メンバーは、息子ヨアキムとその嫁ジュリエッタ、フラコ・ヒメネス、ジム・ケルトナー、テリー・エヴァンス他のコーラス隊等々、だいたいいつものメンバー。

 Chavez Ravine (2005)、My Name Is Buddy (2007)、I, Flathead (2008)の「カリフォルニア3部作」に続く作品ですが、音楽作りは「3部作」と基本的に同じだと思います。歌われてるのは、Upperとは無縁のところにいる人たちの、泣き、笑い、怒り、ボヤキ、呻き。

●私は聴いてすぐ気に入りました。最高。「3部作」が好きな人ならこちらもお気に入りになることは必至と思われます。ライに対しては「昔のようにもっとギターを弾いてくれ」というご意見もあると思いますが、これだけ素晴らしい作品を連発されると、私個人は何の不満もございません。

●ライのヴォーカルの、芝居っ気たっぷりのストーリー・テラー振りの素晴らしいこと。昔のライにもその片鱗はあったかと思いますが、Chavez Ravine 以降の作品でその傾向は顕著になったと思います。そのことはニック・ロウとの来日公演でも感じました。こういう芸風・作風の変化は、映画音楽の仕事に多く関わったことが大きいと思いますがどうでしょう。

●「ジョン・リー・フッカーを大統領に」(John Lee Hooker for President)という面白タイトルの曲も、表情豊かな歌を楽しめますが、ジョン・リー・フッカーが一人称で語る歌詞はこんな感じ。


 知っておいて欲しいんだか
 俺は完璧にワケの分からん奴だ
 共和党でも民主党でもない
 俺には国のための新しいプログラムがある
 グルーヴするぜ、大センセーションだ

とか、

 時代に敏感な俺のこと
 副大統領はジミー・リードに決まり
 国務長官はリトル・ジョニー・テイラーで行く
 外交政策は444個あるし、
 国内消費もアップ間違いなし
 大陸風の服に、カウボーイ帽かぶり、
 皆、ダンス・フロアに繰り出せ


 これをギター弾き語りのブルースナンバーとしてやるわけですよ。途中、Boom Boom とか言ったりしながら、こんな風に

●3曲目の Quick Sand というタイトルを見たときは、ライが去年、移民の違法行為摘発名目で作られたアリゾナ州法に触発されてリリースしたシングル曲と同名(ただし、シングルのタイトル表記は Quicksandで間にスペースなし)なので、それを収録したのかな、と思いましたが。歌詞を流用した別の曲になってました。ただし「アルカイダ」とか歌詞の一部は省略されてます。シングルの歌詞はノンサッチのサイトのこちらで見れます。

●ライの場合、こういう時事ネタを歌にするときでも、音楽の領域にちゃんと留まってるというか、糾弾調にならないのは良いです。アルバム収録版の Quick Sand もシングル・ヴァージョンよりさらにリラックスした曲調になってます。Christmas Time This Year は戦争がらみの恐い内容も含んだ歌ですけど、全体は滑稽感のあるユーモアで貫かれてます。

●終曲のバラードがとっても美しいのはライのアルバムの常ですが、「つらくなんかない、攻めたりなんてしない」と歌う No Hard Feelings は、「3部作」の中では My Name Is Buddy 収録の There's a Bright Side Somewhere と同種の流れ者の歌(ただし登場する1人は元Upper)。昔の曲なら Across The boarderline みたいな雰囲気。ギターなんて5分位の力で淡々と弾いてるだけですが、伝わってくるものは大きいです。出だしの言葉 This Land Should Have Been Our Land は明らかにW.ガスリーの有名曲を受けた言葉でしょう。

●歌詞の載ったブックレットも楽しい写真付きでとても美しく仕上がってます。デジパックのアートワークも良し。ビシッと必要な仕事だけすれば、ボーナストラックだの、豪華仕様何とかエディションだとかはいらんのじゃ。

●英ガーディアン紙の評価は五つ星で、最後に Magnificent と一言。当然。素晴らしすぎ。

Ry Cooder/Pull Up Some Dust and Sit Down

1. No Banker Left Behind
2. El Corrido de Jesse James
3. Quick Sand
4. Dirty Chateau
5. Humpty Dumpty World
6. Christmas Time This Year
7. Baby Joined the Army
8. Lord Tell Me Why
9. I Want My Crown
10. John Lee Hooker for President
11. Dreamer
12. Simple Tools
13. If There's a God
14. No Hard Feelings

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コメント

大不況時代が守備範囲のライにとって、最適な時代になっちゃったということなんですね。
80年かけて、時代がライの歌を求めるようになってきたといえるのでしょうか。
ライが初心に返ったような歌を書くのも必然か。

アメリカではいまや、メキシコ系が黒人よりも人口が多いのですが、
今後、メキシコ系比率がさらに増加してくるでしょうから、
いずれ、黒人音楽からメキシコ音楽にと重心が移り変わってきて、
パラダイス・アンド・ランチが数十年早すぎたといわれるようになるのでしょう。
ライは、いつもちょっと早すぎるような。

mmmさん、どうも。

昔の音楽をよくやってた頃のライ・クーダーという人はどんな心境でそういう音楽を取り上げてたんでしょうね。インタビューでは「単に好きだから」みたいな感じでしたが(笑)。彼自身はとってもインテリな人だと思いますが、少なくとも「来たるべき時代を予言する」みたいな気負いはないです。

彼の音楽って30年前の旧作もまったく古びたところがなく、音楽も歌詞も、装飾とは無縁なプリミティブな印象を受けます。結局そういう音楽は、ド派手に騒がれることはなくても、どんな時代になっても聴き手に受け入れられるのかな、と勝手に思ってます。

時代の嗜好と無関係に、音楽趣味を追求して世界音楽巡りして世界各地の音楽を掘り起こしているうちに、影響を与えてしまったんですね。
金銭的には成功できなかったけれど、(電話代払えなくて、止められたとか聞きました。)、ロックファン以外には名前を知られてないけど。
沖縄音楽が注目されたのはライがきっかけだとは、誰もしらない事実ですね。
南部のブルース、メキシコ、ハワイ、沖縄、キューバといって、
(実はキューバの音楽は僕にはどうも合わない。)
元に戻ったのは、うれしい。
(スペインもありましたね。)
中国にまでは行かないでほしいんですけど。

モダンジャズ以前のジャズを追求したのは失敗だったと本人は認識して二度と戻らなかったけれど、残念です。

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