ボブ・ディランが、To my fans and followers で「中国公演問題」に返答する。
●4月に史上初めて実現したボブ・ディランの中国公演ですが。
公演直後から、おそらくは近年のディランの音楽などろくに聞いてもいない記者による、コンサートの内容とは無関係なテキトーな記事が散見されました(いろいろな推測は、去年、中国公演がなかった時点ですでにありましたが)。
●それらの記事の中でもっとも酷いものが、おそらく、ニュー・ヨーク・タイムズ紙のコラムニスト Maureen Dowd によって書かれた。Blowin’in the Idiot Wind というタイトルの記事です。タイトルも酷いですが、酷いのは内容もそうで、ボブを社会派プロテストシンガーの枠に勝手に閉じこめて、(中国の)独裁に対して抗議しない、商業主義と妥協した人、みたいに結論づけてます。(最初読んだときの文章と一部違うようですが、記憶違い?)
●このコラムに対しては、賛否両論250ものコメントが寄せられただけでなく、一部のファンから公開質問状を突きつけられる騒動にまで発展しましたが、こういう勘違い記者は、ろくに音楽など聴いてないのですから、妄想だらけの記事しか書けないというのは仕方なく、ある意味諦めるしかありません。
朝日新聞にも検閲問題ばかりにクローズアップして変な記事が載りましたが、これらの記事に共通なのは、最近の曲だけでなく、過去の曲でも超有名曲以外は聞いてないオーラが濃厚に漂ってること。もちろん、最近のセットリストなんて何も知らんのでしょう。
●で、このまま事態は沈静化するかと思いきや、5月13日、突然 dylan.comに、To my fans and followers というタイトルで「中国公演問題」についてのボブ側からの公式なメッセージが掲載されました。ボブ本人が実際に書いたメッセージかどうかはともかく、彼が一人称で公式にメッセージを出すことはほとんどないので、「中国問題」に対してかなりナーバスになっていたのかもしれません。
以下、To my fans and followers の内容です。
1年以上続いている、「中国公演騒動」の幾つかについて、はっきりさせておきたいと思います。まず、私たちの中国公演が不許可になったということは一切ないということです。そういう話は、日本、韓国ツアー後に、中国公演を開きたかった中国側プロモーターから出てきた話です。おそらく、合意なしの見切り発車で話をすすめて、チケットの印刷までしてしまったプロモーターの作り話ではないでしょうか。当時、私たちは中国公演を行う計画はありませんでした。中国公演が実現しないことになった時点で、プロモーターが体面を保ち、非難を避けるために、中国当局が公演を不許可にしたということにせざるを得なかったということなのでしょう。もし、中国当局に事実関係を確認することを厭わない人がいたならば、中国当局がこの事態について関知していないことが明らかになったはずです。
私たちは今年、別のプロモーターの下で、中国公演を実現させました。MOJO誌の報道では、聴衆のほとんが外国人客で、ホールは空席だらけだった、ということにされました。それは真実ではありません。コンサートに行った人たちに確認すれば、聴衆のほとんどは中国の若者達で、外国人客は僅かだったということがわかるはずです。外国人客が多かったのは香港公演であって、北京公演ではありません。13,000枚のチケットのうち12,000枚が売れ、残りは孤児の招待用に使われました。
中国メディアは私を60年代のアイコンとしてもてはやしました。街の至る所に私の写真が貼り出され、それらはジョーン・バエズ、チェ・ゲバラ、ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバークの写真と一緒にされました。コンサートの聴衆は彼らが誰なのかわからなかったと思います。にもかからず、コンサートでは新しい4,5作のアルバムからの曲に対して熱狂的な反応がありました。誰でもよいのでコンサートに行った人に訊いてみてください。聴衆は若く、私の初期の曲は知らなかったと思います。
検閲はなかったわけではなく、中国政府から演奏予定曲のリストを提出するよう要求されました。論理的な返答などしようがなかったので、私たちは過去3ヶ月分のセット・リストを送りました。文節や言葉の検閲された曲があったかどうか、今のところ分かりません。私たちは、やりたい曲をすべて演奏しました。誰もが知っているように、私に関する無数の書物が今までに書かれてきたし、これからも書かれるでしょう。今まで私に会った人、私から話を聞いた人、私と面識をもった人たちは、どうぞ同じことをすればよいし、適当に書き散らかせばよいと思います。その中に、偉大な本があるかどうかなんて、誰も分かりはしないでしょう。
●前半部分の、去年中国公演の開催に失敗したプロモーターの作り話云々の箇所はボブ本人の言葉ではないのかなという気がしますが、最後の皮肉めいた一節はボブ色が濃いように思います。まあ、ご判断はお任せします。近年の作品をちゃんと聞いてるファンに対するリスペクトも伝わってきます。
(おかしな訳があったらご指摘よろしく)
●以上、珍しいボブの一人称メッセージでした。
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