ビル・レヴェンソン、レイラ40周年記念盤について語る
●4月に発売されるドミノスのレイラ40周年記念盤について、プロデューサーのビル・レヴェンソンがWhere's Eric 誌に語ったインタビューが同誌のWeb版に先行公開されました。
●以下、その要約です。
(1) レイラ(アルバム)のマルティ・トラック・マスターは、Crossroads Box製作が最終段階に入った時に NY の Sterling Sound で旅行用カバンの中から発見されるまで所在がわからなかった。Boxの作業終盤だったため Layla にだけ使用。その後、フル活用して20th記念盤を製作した。
(2) 40th盤は20th盤とはまったく別の意図で製作。20th盤は70年9月のレイラ・セッションに焦点を絞ったもので、40th盤は70年から71年にかけてのバンドの活動に焦点を当てたもの。レイラのアルバム自体に焦点を当てたものではなく、スペクター・セッションから2ndアルバムまでのバンドの活動を総括するもの。
(3) In Concert はリマスターのみ。ミキシングはオリジナルのまま。
(4) LPに使用したテープはUKミックスで、CDに使用したテープはUSミックス。LP用のテープはポリドールUKにあった状態の良いものを使いロンドンでカッティングした。UK盤LPに使用されたテープの日付は70年9月29日で、US盤LP用のテープの日付は10月第1週。その間に Layla, Tell The Truth(あるいは他の数曲も)は手直しされた。両者の音の質感は違う。
(5) ブックレット収録のアシュレイ・カーンとデレク・トラックスの対談はとても興味深いもの。
(6) スペクター・セッションのTell The Truth / Roll It Over は、オリジナル・ミックス、Crossroads Box 用ミックス、新たに施したミックスの3つを比べた結果、Crossroads Box 用ミックスがベストと判断、それを使用した。
(7) Roll It Over のデータには、ドミノスのメンバー以外に、デイブ・メイスンとジョージ・ハリスンの名がある。
(8) ジョニー・キャッシュ・ショー音源はソニーからライセンスを得て新リミックス。未放送分も含む4曲収録。
(9) 2ndアルバムのリミックスは、当時レコーディングに関わったアンディ・ジョンズが担当。新たに追加された Got To Get Better In A Little While は、未完成だった音源にボビー・ウィットロックのボーカルとキーボートを加えてリミックス。どう処理すべきか Crossroads Box 製作時から懸案だったが、今回ボビーにテープを送り彼がオーバーダブ用に音源を作成。最終的には全体の音源といっしょにジョンズがLAで仕上げた。
(10) クラプトンは今回の作業にまったく関わっていない。
(11) クライテリアでのジャム音源は98%がた20th盤に収録済み。音源のすべての部分が聴かれるべきだとは思わない。2ndアルバム用の音源は曲単位で使用するのが基本姿勢。完成されたかそれに近い曲のみを使用し、ジャム音源は Got To Get Betterに使用した例外をのぞき除外した。ボーカルがない音源や曲の構造が出来ていない音源は、興味深いがあくまでバッキングトラックに過ぎないので除外した。その判断はCrossroads Box製作時と変わらない。
(12) ドミノスのライブ音源は残念ながら他に存在しない。ブート音源を使用するとの考えもあったがサウンドが制作上のスタンダードに満たないので止めた。以前にlive at the Marqueeと書かれたテープ箱のコピーを見つけ、それにはトラック・リストと日付も記載されていて、真正なライブ録音のように思えたが、現在までにテープは見つけられていない。
●と、非常に興味深いものでした。あの素晴らしいマーキーのライブ音源があるかも知れないとは驚きです。レヴェンソンの写真は初めて見たのですが、お茶目なオジサンという感じで、想像していたマニアックな求道者という感じはまったくないんですね。
40周年記念盤(super-deluxe edition)の全トラック・リストはこちらで。当盤のパッケージが立体的にわかる動画もあります。
いつか、Derek and The Dominosu Live at The Marquee のテープが発見されることを祈ります。
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ソウル公演からひと月が過ぎましたが、あのときはまさか日本がこうなるとは思ってもみなかったというのはSatoさんも同様であろうと思います。
リビアではついに空爆が始まりましたが、地震が起こっていなければ、間違いなく1面のトップニュースに取り上げられていたことでしょう。
テロ、戦争、天災と、21世紀はまったくもっていいことなしですね。
さて、WE!のビル・レヴィンソン・インタビューですが、私も舐めるように(笑)読みました。Satoさんが要約してくださった内容のうち、私にとってとくに興味深かったのが(4)の件です。もう何年も前になりますが、zakさんが主催するブート系サイトで、WE!活字版15号(1996年4月号)掲載のレヴィンソン・インタビュー(今回のものと発言内容はかなりダブっています)を引用しながら、アルバム『LAYLA』のマルチテープ、マスターテープについて論じたことがあるからです(あれ、どなたか保存されてませんかね〜)。
一連のディスカッションのなかで、すろーはんどM谷さんから「マスターテープが使われたのはUK盤、US盤のどちらなのか?」という質問があり、私は「マルチテープがアメリカのスタジオから発掘された点から見て、US盤の可能性が高い」とお答えしました。US盤のほうがUK盤よりも1カ月以上早くリリースされたことも頭にありました(US盤=70/11/09/UK盤=70/12/11)。
しかし、今回のインタビューを読んで、UK盤にマスターテープが使われた可能性もありうる、と思えてきました。
「おっ、やっぱりそうだったのか。よかったよかった」とUKオリジナル原盤(マスターテープ使用の有無とは関わりなく、カタログ上では「原盤」=UK盤なのは動かしようのない事実です)の所有者の方は胸を撫で下ろされているかもしれません。が、安心するのはまだ早い(笑)。
今回のインタビューでいちばん驚いたのは、テープがイギリスに送られたあと、アメリカで2曲(Tell The Truthと、具体的な曲名は挙げられていないが、もう1曲)ほどミックスに手が加えられた形跡があるという発言でした。レヴィンソンは、自身不確かながら、弄られた曲はほかにもあるのかもしれないと示唆しています。つまり、アルバム『LAYLA』はUK盤LPとUS盤LPとで、ヴァージョンが違うことになります。
そして、アメリカで、いわば事後にテープが改変されたこと自体が、やはりマスターテープはニューヨークに留まっていた可能性を感じさせます。今回の40周年記念盤で、LP盤にUKポリドールに保管されていたテープが使われたのは、それがマスターテープであるからという発言はなく、単に保存状態がよかったから、という理由をレヴィンソンは挙げています。
投稿: ブルー爺 | 2011.03.21 14:34
Satoさん、どうもです。Dominosネタになるとついつい書き込んでしまいますね(笑)
> (12) ドミノスのライブ音源は残念ながら他に存在しない。ブート音源を使用するとの考えもあったがサウンドが制作上のスタンダードに満たないので止めた。
ここでは、Marqueeのテープの存在を匂わせてはいますが、現状見つかっていないと。
でも、10/21/70 Lisner Auditorium, Washington DCのテープも存在する筈と言う話があります。
it was recorded on a soundboard - my friend worked security at this show and saw the tape, so I do know it did exist...sure hope it "arrives" one day....
と言う書き込みがあるんです、HTWに。
http://www.allmanbrothersband.com/modules.php?op=modload&name=XForum&file=viewthread&tid=101220
ABBは当時殆どの演奏を自ら録音していたことは有名で、それらが今のアーカイブシリーズに繋がっている訳ですが、Dominosはしていなかったのでしょうか?
他にも例のDuaneが参加した3日目と言われている12/3/70 Eastown Theater, Detroit, MI公演ですが、会場外にポータブルスタジオ(ワゴン車)があったと言う証言もあります。前にも貼りましたが、以下に転載。
1) In December 2009 'Motownharry' posted the following 2 comments on the 'YouTube' page http://www.youtube.com/watch?v=SuRVXKwU-jM :
"I do remember seeing Clapton and Duane doing Little Wing at the sound check @ The Eastown Theatre in Detroit in the winter of `70-`71. It was 1 of the worst blizzards in years, the show was sold out and because of the weather only about 80 people showed up, the place holds 750. I don`t know or remember if this recording was made that night but they did have a portable studio (big step van) out side. They played like the place was packed, sweat pouring out like Niagra"
"if your saying that Duane did NOT tour with Derek & co. your are mistaken. I worked @ The Eastown Theatre from `70 -`72. And Duane Allman, Bobby Whitlock and Eric were there and playing on the stage during a fn blizzard in the winter of `70-`71. Now they may not have recorded Wing there but I am POSITIVE of who I saw and talked to on that night and DUANE ALLMAN PLAYED ON STAGE W/ CLAPTON AS DEREK AND THE DOMINOS that night"
投稿: mars | 2011.03.21 16:15
Satoさま
以前コメントを書き込んだのですが、読んでいただけておりますでしょうか?
何かエラーなのか、内容がつまらなくて反映されないのか、心配で私信いたします。
投稿: tex | 2011.04.12 15:54
texさん
書き込んでいただいたコメントはすべて拝見させていただいてます。
書き込む際に、パスワード要求されますがそれは私が書き込むときもそうです。
書き込まれたコメントは自動反映される設定になっているので、私のほうで反映するかどうかを決めるということはありません。
(スパム以外のコメントを消すこともしていません)。
さっと過去コメントを眺めてみたのですが、該当するものが見つからないのでエラーだったかもしれません。
お手数ですが、再度コメントくださると、助かります。
ということで、よろしく。
投稿: Sato | 2011.04.12 16:44
では、仕切りなおしで…
ディープな皆さんこんにちは。
さて、ブルー爺さんのおっしゃっている
>>アルバム『LAYLA』のマルチテープ、マスターテープについて論じたことがある
これは以下の事ではありませんか?
http://midvalley.tripod.com/article009.html
http://midvalley.tripod.com/article010.html
また、話は変わりますが、2009年ごろにUniversalが60周年記念で“Back to Black Vinyl”というシリーズで、オリジナル・マスターからの復刻という名目で名盤の多くを180g盤で出したんです。そこで云うオリジナル・マスターとは何のことなんでしょうね?
http://www.backtoblackvinyl.com/vinyl/Derek_And_The_Dominos-Layla_And_Other_Love_Stories.php
投稿: tex | 2011.04.12 21:45