廃墟ゾフィエンザールを見る
盆休みでダラけてるので、廃墟訪問ネタでも書いておきます。
●50年~80年代にかけて、デッカ・レコードのウィーン録音会場として使用されたゾフィエンザールです。行ったのは5月下旬。
クラシック音楽好きなら、デッカのウィーン録音のディスクに記載された「ゾフィエンザール(Sofiensaal)」というクレジットを数え切れないほど目にしていると思います。DGやフィリップスといった大陸系レーベルの音とは明らかに異なる、あの派手目でブリリアントなサウンドのウィーン録音の本拠だったのがこの場所。
現在の姿です。
下は現役時(1965年)の姿。BBCのドキュメンタリー The Golden Ring のDVDより。
●ここでの録音セッションは無数にあるわけですが、デッカが当時専属契約していたウィーン・フィルの録音会場を、必ずしも録音向きとは言えなかったムジークフェライン・ザールからここに移したのは1950年代中頃でした。メインのプロデューサーだったヴィクター・オロフがHMVに移籍した機会に、後任のプロデューサー達が判断したようです。
以下、デッカの名プロデューサーだったジョン・カルショーの「リング・リザウンディング(Ring Resounding)」(学習研究社刊、山崎浩太郎訳)より。
「ウィーン・フィルは(中略)ゾフィエンザールへの移動には強硬に反対した。ゾフィエンザールは舞踏会場で、会議などが開かれる場所だった。一時は水浴用のプールだったこともある。演奏会場だった時代にはヨハン・シュトラウスが指揮したこともあるが、そんな事実もウィーン・フィルには関係なかった。彼らの目には、さえない環境で不便なものとして映っていた。」(105p)
「《指輪》録音の期間を通じて、ゾフィエンザールのある場所を使用する必要がときどき生じた。そこは表通りに面しているので、通行止めにしないと録音することが不可能だった。しかし警察は、どんなときでも面倒を厭わずに(迂回させられる運転者たちのことは言うまでもない)私たちを助けてくれた。」(110p)
正面にある道路は、車1台通るのがやっとという狭さで、それほどスピードを出して通過するわけではないと思うのですが、外部からの遮音はその程度だったようです。上のカルショーの著書によると、録音時に屋根の上にいる鳥たちが演奏に合わせて鳴くので困ったそうです。
正面やや右より。完全に廃墟。建物右部分がごっそりなくなってます。
裏側より撮った2枚。廃墟、というか解体中。
●この建物が建ったのは1826年。当初は Sofienbad と呼ばれるスチーム風呂場だったそうで、その後ダンスホールに改修。デッカの録音には56年から80年代中頃まで使用されたそうですが、2001年に火災によりダメージを受け、現在は上のような状態です。
火災後、内部に入った方の貴重な写真がこちらで見れます。
将来的にはアパートに改修される予定だそうですが、上の写真でわかるように改修というより建て替えに近いです。
Decca のDVD、The Golden Ring で見れる録音時の内部。1965年のショルティの「神々の黄昏」のセッション。
●場所は空港からの電車が着くミッテ駅の東側、駅から徒歩10分程度です。音楽好きの廃墟マニアの方は現地に行かれることがあればどうぞ。こんなところに来る物好きはいないので人混みが嫌いな方はお勧めです。
古い建物が多いウィーンですが、訪問時ミッテ駅は建て替え工事中で、敷地はほぼ更地。
完成後は下のような姿に生まれ変わるようです。ちょっと町並みに合わない気もしますがどうなんでしょう。
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