Eric Clapton - Live File 1(福井章彦 著)
●Live File というタイトルからも分かるように、ライブ音源でたどるクラプトンの音楽研究です。ソフト・カバーで、本文は197ページ。1400円(税別)。
●初巻の今回は1963年から1975年まで。福井氏については、Beatleg誌のレビューや記事ですでにご存じの方も少なくないでしょう。本書もBeatleg誌の連載をまとめたものということです(おそらく加筆あり)。は書き下ろし。
同様の作業として、Web上では Mark Deavult氏(Geetarz) の力作が知られています。Geetarz氏の作業は、音質・演奏の客観的な評価に重きが置かれた感じでしたが、本書ではそれに加え、さらに人間クラプトンに迫ろうとする視点が感じられます(特に各ツアーの概観部分)。
●音源は、年代順に時系列的にまとめられていて、オフィシャル音源と非正規音源の区別はされておらず、両者は等価のものとして扱われてます。
演奏レビュー、音質評価、初出ディスク、定番ディスクが簡潔に整理されていて非常に読みやすいです。
●各音源は、「必聴」「定番」「ファン限定」「マニア限定」「コア・マニア限定」の5段階総合評価が下されていて、こういう本を買うヤバイ道に入り込んでしまった人は、各音源については自分で落とし前を付けてしまえるかなとも思うのですが、それでも興味深く読ませていただきました。
例えば、ドミノスの1970年10月のフィラデルフィア公演(AUD)は「必聴」ですが、フィルアモ・イースト公演(SBD)は「定番」になっています。
あるいは、アルコール漬けだった74年のカムバック・ツアーを(負の意味で)象徴するような泥酔ぶりが聴ける7月4日のコロンバス公演は「ファン限定」という評価です。コロンバス音源はECのキャリアを振り返る上ではまさに「必聴」であるとは思いますが、その辺、著者はあくまで冷静です。一ファンとしての本音は別かも知れませんが。
ちなみに、「コア・マニア限定」はそれほどあるわけでなく、ドミノスだと、70年8月14日、UKでのモルヴァーン(Malvern)公演がそれに該当します。同日の I Don't Know Why を聴いて喜びに浸ったことのある人はコア・マニアです。犯罪者にならないうちに早く更正してください(笑)。
●音質的にかなりバラつきのある非正規音源をここまで聴き込んで整理するだけでも大変な作業であったと思われます。思わず目を見開かせてくれる視点が至るところにちりばめられていて集めた音源をあらためて聴き直してみよう、というアブナイ欲求がむくむくと沸いてきて、喜んでいいのやら、嘆いていいのやら・・・
●75年までの音源だけでもかなりのヴォリュームがあり、本書をめくっていると、著者も書かれているように「(クラプトンが)ライブに生きてきた人」であることを痛感させられます。アルバム・アーティストとコンサート・アーティストという分類があるとすれば、クラプトンは明らかに後者なのだなと。もちろんアルバムも十分魅力的ですけど。
この先あと30年。しかも後に行くほど音源が大量。天国か地獄か。
●主にGetty Imagesの提供する多数のレア写真が収録されていて楽しめます。75年日本公演の写真は著者自ら望遠レンズを使用して撮影した上質かつ感嘆させられるものですが、当時の著者は数十年後にこういう書物をしたためるとは想像だにしなかったでしょう。
力作。同好の士は買いましょう(笑)。
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