CSN&Y / Deja Vu のDVDを見る
●2006年に行われたCSN&Yの Freedom of Speech tour のドキュメンタリー・フィルムです。
日本盤はまだ先みたいなので、安いアメリカ盤で買ってみました(リージョン1なので日本仕様のDVD機では見れません)。英語とスペイン語の字幕付き。96分。
Shakey Pictures 製作で、当然監督も Shakey(二ール)。
以下、ネタバレありです。
●良い作品でした。素直に感動。傑作だと思います。でも、どう書いてよいか難しいです。
演奏シーンの割合が低く、そのシーンも断片的にしか登場しないので、曲・演奏自体をじっくり聴きたい人向けではないです。
演奏聴きたい人はCDで。曲数が物足りない人はオーディエンス・ソースかブートを探しましょう(笑)。コンサート・フィルムと思って見ると激しく失望します。
●序盤は、専らツアーにまつわる話の概観。
FOSツアーについて、クロスビー曰く、「CSNYは民主的でなく、むしろ独裁的に動いてるけど、それは悪意のない独裁なんだ。ニールがバンドを引っ張ってるのは、彼がそう要求したり、ボス然と振る舞いたくてそうなってるんじゃない。彼がこの問題をずっと考えて来た結果なんだよ」
同じく、ニール。
「僕らの責任は、ショーを見た後、オーディエンスが、ラリったり、暖かい気分でいるようなショーをすることじゃなく、時代の転期が来てるということを感じてもらうショーをすることだ」
こんなステージの光景が出てきます。巨大なマイクスタンドに結ばれた黄色いリボン。背後のスクリーンには無数の兵士のお墓の前ではためく星条旗。流れている音楽はジミのウッドストックでの「星条旗よ永遠なれ」。
「ほら吹き大統領を弾劾しよう」とストレートに歌う Impeach The President で、オーディエンスに否定的な反応があるのはちょっと驚きました。会場から出てきたオーディエンスの1人が、「この国は戦争中なのよ!」と息巻いたり。この人なぜ、Freedom of Speech tour を見に来たんでしょう(笑)
●Ohio を演奏する昔と今のCSNYの映像などが流れ、ベトナム戦争とイラク戦争の違いを取り上げるあたりは興味深い内容になってます。
紹介されるジャーナリストの意見。
「大統領が、民主的な生活を守るためと称してイスラムのファシストとの戦争を主張しても、彼は徴兵制を復活させることはしないだろう。それは政治的に高くつくからだ。それはイラク戦争の大きな相違点である。ベトナム戦争時は徴兵制があり、脅威を感じた学生達を団結させプロテストへ向かわせた。
そのような事態を避けるため、ブッシュは同じ兵士達を何度も危険なイラクの戦場へ向かわせ、彼らが戦死し、障害者になる可能性を劇的に増大させている。それがベトナムとの違いだ」
ニールの Ohio についての話、
「しばらく歌えなかったことがあった。自分が事件を利用し、不運だった人間の上で取引していたように思えて。自分たちの成功や、オーディエンスをノスタルジーに浸らせるためにね。
だが、今は状況が違う。今の状況は歴史そのものなんだ。フォーク音楽がやるように、歴史を引っ張り出そうと思っている」
文字だけ書くと、堅苦しい感じですけど。オハイオを演奏する昔のCSNYやフィルモア・イースト前の集会映像が出てきたりで興味深く見れます。
●当然、CSNY側、反イラク戦争の立場からの主張が多いですが、FOSツアーについてのメディアの賛否コメント(辛辣なものあり)を所々に印象的な形で挿んでいて、言いたいこと言ってお終いになっていないのはよいですね。
ドキュメンタリーとしての構成の良さは、イラク戦争報道に現場で関わり、本作でも、documentary produced and written by として名を連ねる、Mike Cerre (作品内にも登場)の存在も大きいのかもしれません。
後半に行くほど、ツアーよりもイラク戦争下のアメリカ社会を見つめる内容になってます。戦争がテーマですから泣けるところもあります。
個人的にはお勧めしたい作品です。英字幕で見たので誤読があったらごめんなさい。
●ボーナスに、Living With War Today サイト(音楽が鳴るので訪問の際はご注意)で見れるビデオが収録されていて、高画質、高音質で見れます。ディスク以外のブックレットはなし。日本盤もそのうち出るでしょう。
CDも出てますが、そちらは後ほど。
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