グールド、カラヤンの57年ライブ録音を聴く
●1957年5月、ベルリンでのライブ録音。収録は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番とシベリウスの交響曲第5番。
グールドのピアノに、カラヤン指揮ベルリン・フィル。SONY BMGから正規音源としてはうれしい初登場。
実際の公演では1曲目にヒンデミットの「画家マチス」が演奏されましたが、ディスクの解説によると、ヒンデミットだけ、1964年になぜか録音が消去されたそうです。
会場は当時のベルリン・ホッホシューレ(旧ベルリン音楽演劇大学、現ベルリン芸術大学)のホール。
5月24日から26日までの3公演のうち、どの日の録音かクレジットがなく、非正規盤のクレジットによると26日とされてますが(会場が当時存在しないフィルハーモニーになっており、あてにならんデータです)、24日の録音のようです。
●グールド・ファンの間ではよく知られた録音ですが、90年代前半に SONY から統一アートワークで大量にリリースされ、ザルツブルクやレニングラードでの未発表ライブ音源を含んでいた THE GLENN GOULD EDITION でも、この音源のリリースはなし。長年、非正規盤でのみ聴けた音源でしたがようやく登場です。
●気になる音質ですが、モノラルながらステレオ・プレゼンスが若干付加されてます。
自分の持ってるキング・レコードから出ていた Music & Arts 原盤のディスク(左)の音のようなモコモコ感がなく、特に高音域の繊細な響きは非正規盤では聴けなかったものです。管楽器の分離もくっきり、バスの声部の動きもくっきりと聞こえ、ピアノ、オケの響きとも正規盤の圧勝。
●演奏の素晴らしさについては今さら私が付け加えることは特にないですが、グールドが仮に特異な演奏スタイルの道を進まず(笑)、オーソドックスなコンサートピアニストの道を歩んでいたとしても大ピアニストになったであろうことを確信させます。
非正規盤でも聴けなかった初出のシベリウスも含め、カラヤンのオーケストラ全体をコントロールする能力の素晴らしさは圧倒的で、シベリウスの2楽章から3楽章にかけての移行部分の迫力など凄まじいばかり。しばしばこの指揮者に浴びせられ続けた、精神性の欠落とかいう批判が完全にアホらしく聞こえます。
それにしても、当時のベルリン・フィルの低域のずしりと重い響きの素晴らしいこと。
●解説によると、グールドとカラヤンの2人は、76年に「共演」のプラン(というかグールドの希望)があったようで(バッハの1番とベートーヴェンの2番)。
解説曰く、まず、両者が電話で解釈についてディスカッション(笑)。ついで、ソロ・パートの録音をグールドがカラヤンに送り、さらに、それを聴いたカラヤンがグールドの解釈に基づいて録音したオーケストラ・パートを送り、両者を合体させる・・・
という信じられない話です(distant recording とか(笑))。
話自体突拍子もないもので、所属レーベルの違いもあり実現していたとは思えませんが(グールドの健康状態により頓挫の模様)、都市伝説としては十分面白い話ではあります。
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