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2007.06.28

1980年ウィーン国立歌劇場来日公演DVD
モーツァルト「フィガロの結婚」

 タイトルだけ見て逃げないでください・・・
 拙ブログのジャンルに一応「クラシック音楽」もあるので。数ヶ月に1度くらい?は書きたいことが出てきます。

「フィガロの結婚」
「フィガロの結婚」

1980年9月30日、東京でのウィーン国立歌劇場来日公演の記録。NHKに保存されている当時の録画テープを元にDVD化。この公演に思い入れのある人にとってはまさに狂喜乱舞のDVD化。

 私的履歴としては、当時のFM放送自録のカセット・テープ、ブートCDを経て、ようや正規盤。しかも映像付き。

 この公演こそ、クラシックは聴いても、あの独特大袈裟な身振り、というか歌い振りが苦手で、オペラは全然聴く気もしなかった自分を、オペラの世界に引きずり込んだ犯人。
 といっても、私のオペラ好奇心は偏向の極みで、今でもイタリア物は一部をのぞきダメダメですが。

●私的に、この公演の「神」は、ダントツで、スザンナ役を歌うルチア・ポップ

 モーツァルトが、それまで喜歌劇の中で、「ただの滑稽な小間使い役」に過ぎなかったスーブレット役を、途方もないレベルに引き上げちゃったってことを、いきなり何にも知らない私に、ドカンとブチ込んでくれました。もちろん当時は「スーブレット」だのなんだのなんて知識などありませんでしたが。

 最初にFM中継を録音したその日から、文字通り、猿のように毎日聴きつづけましたですよ。まあ今でも、ブートからリップして iPod にぶち込んであるくらいなんで。

 その後、多くのスザンナ役を聴いてきましたが、私には、今でも最高のスザンナ。
 まあ下品な言い方をすれば、初めての女が、数十年後に振り返っても「最高」だったみたいなもんです。ハハハ。

 この時、ポップは40才。オペラ歌手としては十分若いです。彼女が54才で夭折するなんて誰が想像したでしょう・・・

映画「アマデウス」でサリエリが、「4幕目は 打ちのめされた..(略)..まことの赦しに満ちた音楽が劇場を包み 圧倒的な感動で観客の心をとらえた 神がこの小男を通じ 天井から世界に歌いかけていた」(日本盤DVDの松浦美奈氏の字幕)と語る、最終幕のフィナーレの場面の神々しいこと。

 この場面って、単に、女たらしのスケベ伯爵が、「ごめんなさい、もうしません」と謝り、彼の妻が「寛容な私は許します」と言ってるだけなのに。

 今聴いても、ヤノヴィッツの伯爵夫人が、Piu docile io sono...(とっても寛容な私は...)、と弱音でゆっくり歌い出す部分はほとんど鳥肌もの。それにからむウィーン国立歌劇場管弦楽団の素晴らしい弦楽器・・・

 第3幕の伯爵夫人役のヤノヴィッツとポップの2重唱もとろけるほど美しいです。ヤノヴィッツの声は明らかに全盛期のそれではないですけど。傷のないテクがすべてじゃないんですな、音楽つうのは。

 今では還暦を過ぎた(信じられん・・・)アグネス・バルツァの、「小姓」の枠を遙かに超えちゃってる中性的なケルビーノも最高。当時すでにケルビーノ役は歌わなくなっていたところ、ベームのご希望に応じてケルビーノ役を務めたそうです。

●冷静に「鑑賞」すればいくらでもケチは付けられます。

 ベームの遅すぎるテンポとか、生演奏特有のオーケストラの乱れとか、全盛期とはいえない歌手の声とか、地方巡業用の簡素化された舞台装置とか、DVDの字幕が日本語の焼き付けのみでOffにできないとか、なぜかプロンプターの声がでかい音で録れちゃってるとか・・・
 でも、私にゃあ、そんなことどうでも良いでござんす。

●今となっては、当時すでに86才のカール・ベーム(1894年8月28日-1981年8月14日)はもちろん、フィガロ役のヘルマン・プライ(1929年7月11日-1998年7月22日)も、そして私をメロメロにしたポップ(1939年11月12日-1993年11月16日)も、皆、天国。

 でも、このDVDの中で、ポップのスザンナは永遠に若いです。
 しかし、ヤノヴィッツとポップがたった2才しか違わなかったとは・・・

画質も当時のビデオ映像としは極上。値段は高めですが、あえて画質重視で2枚組にした心意気を買いましょう。付属の解説によると、音声は別に収録しておいた 2トラ38 のステレオ録音をシンクロさせたそうです。作品解説より、当時のチーフディレクターの収録回顧、DVD化作業に携わったエンジニアの説明が遙かに興味深いです。
 
 我がライブラリイに、お宝一枚追加。

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クラシック音楽」カテゴリの記事

コメント

「タイトルだけ見て逃げないでください・・・」とのことですが、こういうネタになるとすぐに喰い付く私もどうかしてますね(苦笑)。

遂にでましたか!80年ベームの「フィガロ」が。
この公演って確か当時の評価はかなりわかれていたような記憶がありますが(晩年のベームのゆったりしすぎのテンポがその評価のほとんどだったように思う)、それでも歌手は一流ぞろいですし、やはりこれはじっくり聴いてみたいもんです。
実は私ベームの「フィガロ」のDVDが欲しいな、と思っていたんですが、この公演のDVDが出るという情報を得てずっと我慢の子であった(笑)のです。

それにしてもヘルマン・プライ、グンドゥラ・ヤノヴィッツ、アグネス・バルツァ、ルチア・ポップとはホントにすごすぎる歌手陣ですねぇ。ルチア・ポップってオペラ・アリア集もずいぶん出していますが、ドイツの民謡を集めたものとか向こうの童謡を歌ったものもあって、これらも可憐でとてもステキです。

クラシックDVDも面白そうなものがたくさん出ていて、とても全部買えるものではないですが、ホルスト・シュタインがワーグナーの聖地バイロイトで振った「パルシファル」ももうすぐ国内盤で出そうですし、ベームのモーツァルトの交響曲の集成とかはなんとしても見てみたいです。

こうなったらカルロス・クライバーがミラノ・スカラ座と来日した折(確か1981年だったか)の「ボエーム」もDVDで是非出してもらいたいもんです。NHKには映像も残っていると思うんですがね。これは本当に素晴らしい舞台でした。ミレルラ・フレーニの演ずるミミの可憐さとはかなさに私はテレビの前で泣きました。

kazuさん、どもです。
このネタにコメントいただけて、DVD化並に感涙です。

>この公演って確か当時の評価はかなりわかれていたような記憶がありますが(晩年のベームのゆったりしすぎのテンポがその評価のほとんどだったように思う)、それでも歌手は一流ぞろいですし、やはりこれはじっくり聴いてみたいもんです。

おおむね好評でしたが、冷静な批評はけっこう注文がついてました。
といっても、当方十代だったので記憶は定かではありません。


>実は私ベームの「フィガロ」のDVDが欲しいな、と思っていたんですが、この公演のDVDが出るという情報を得てずっと我慢の子であった(笑)のです。

我慢の子で正解だったと思います(笑)。
ベームの「フィガロ」DVDって、あと、映画風のやつ(DG)と60年代のザルツ・ライブの白黒ビデオ(TDK)がありますね。
DGのやつは良くまとまっててケチつけるようなところはないんですが、今ひとつ燃えません。
オペラは多少傷があっても生の舞台撮り(録り)にかないません!
TDKのは画質が劣化してる部分はありますがなかなかいいですよ。スザンナはグリストです。


>それにしてもヘルマン・プライ、グンドゥラ・ヤノヴィッツ、アグネス・バルツァ、ルチア・ポップとはホントにすごすぎる歌手陣ですねぇ。ルチア・ポップってオペラ・アリア集もずいぶん出していますが、ドイツの民謡を集めたものとか向こうの童謡を歌ったものもあって、これらも可憐でとてもステキです。

この面子はザルツブルグ音楽祭でも実現しないような豪華さです。あり得ないくらい。

ポップのアリア集は2、3枚持ってますが良いですね。
一曲だけお薦めさせていただけば、ドヴォルザークの「ルサルカ」の「銀色の月よ」。これ泣けます。


>クラシックDVDも面白そうなものがたくさん出ていて、とても全部買えるものではないですが、

まさに(泣)
欲しいの買っていたら破産するので、自分はスカパー!のクラシカというチャンネルに入っていてそれで代用してます。先日も89年バイロイト、シノポリの「パルシファル」やってました。

DVDはどうしても欲しい物だけ買うと。


>カルロス・クライバーがミラノ・スカラ座と来日した折(確か1981年だったか)の「ボエーム」もDVDで是非出してもらいたいもんです。

間違いなくNHKに映像は残ってると思います。「オテロ」も含めてケチのつけようがない超絶名演でしたから、私も是非映像付でもう一度見たいです。
音だけなら極上のブートがあるんで、今は、それで我慢してます。

ボエームは泣けましたねえ。録音聴いてると終幕で会場がすすり泣いてるような感じです。
ミミが死んだ後のオーケストラの凄い音は鳥肌たちました。
尋常なレベルでない天才と完全に実感しましたです>クライバー

止まらないのでこの辺で(笑)

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