カール・ベーム指揮ウィーン・フィル 1977年来日公演DVD
発売されて少し時間が経ちましたが、ようやく買いました。
1977年3月2日、NHKホールでの演奏で、当夜のプログラム、
ベートーヴェン交響曲第6番「田園」
同 交響曲第5番
同 序曲「レオノーレ」第3番(アンコール)
の全曲収録です。
●当時、少年だった私は、ひょんなことからクラシックに興味をもったものの、外来オーケストラのコンサートに実際に出かけるなんて「想定の範囲外」。
この DVD に収録された演奏も、NHKのFM生中継にかじりついて、SONY の HF-90 のカセットテープに必死に録音したのでした。テンポが遅いので、「田園」はテープ片面に全部収まるかヒヤヒヤしながら(ギリギリ入りましたが、演奏者紹介のアナウンスの前までが限界でした)。
生中継を聴いていて、もっとも印象的、というか驚いたのが、「田園」の終楽章のテーマを演奏するウィーン・フィルのヴァイオリンの響きで、ほとんど尋常でない神々しい音はガキでも分かりました。コーダ(終結部)の弱音部の響きも素晴らしいです。
当時は、クラシック音楽を聴き始めたばかりで、個々のオーケストラの音色の違いまで聞き分けるような耳は持っていませんでしたが、「ウィーン・フィルというのはなるほど格別なオケなのだなあ」と少年は思ったのでした。
もう一つ好きな箇所が、同じく終楽章で、主題がクレッシェンド後に全奏で鳴るときのホルンの咆哮。
ここのホルンをオーケストラの全奏から飛び出さないよう控えめに鳴らす指揮者も多いですが、この演奏で刷り込まれたのか、この箇所でホルンが他の楽器に埋もれ気味の演奏だと、それだけで、今でもショボーンなのです。
その後、数え切れない数の「田園」を聴いてきましたが、私の中ではこれが一番。永遠の「田園」です。
●画質は予想以上に素晴らしく、以前に再放送で見た75年の来日公演の映像よりはるかに良いです。今回75年公演もDVD化されましたが、私はまだ買ってません。77年と比べて、映像のクオリティはどうなのでしょう?
ビデオテープの保存状態については、不思議なところがあり、NHKの「アーカイブス」で見た、KISSの武道館公演の映像は70年代後半(1978年?)の収録にもかかわらず、劣化の度合いが酷かったです。
NHKは、プロ用のビデオテープが高価だった時代には、収録に使用したマスターも他の番組を録画するために上書きしていた、という話を聞きます。それゆえ、70年代初頭のセル指揮クリーブランド管やムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの来日公演の映像は残っていないということです。残念無念ですなあ。
ただ、有名な米ABC放送のエルヴィスのカムバック・ショーなどは1968年のヴィデオ収録にもかかわらず、最近発売されたDVDを見ると凄まじい高画質です。ABCは高品質のテープを使い、最高の環境下でマスターテープを保存していたということなのでしょうか。
●晩年のベームについては、日本で非常に偶像化されており、以前にドイツ・グラモフォンのプロデューサー(ギュンター・プレーストだったような気がしますがはっきり覚えてません)が、ベーム晩年の録音は日本からの要請で実現した旨、音楽雑誌のインタビューで語っていたのを読んだことがあります。
偶像化を排して、このDVDの演奏を冷静に評すれば、いくらでもネガティブな評価をすることもできると思います。
でも、終演後にオケがステージから去った後も、ステージ前に押し寄せた聴衆の熱狂的な拍手に喜ぶベームの笑顔をこのDVDで見たら、なんと言われようが、この演奏がもたらす幸福にひたっていたいと思うのでありました。
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コメント
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ベーム77年ご覧になったのですね。
私も気にはなっていたのですが、他ミュージシャンの来日公演等あり、未だ未購入です。
でもこの時のFM放送は私もエア・チェックしておりました。
「田園」終楽章の弦楽セクション、特にヴァイオリン奏者たちの上半身を大きく揺らせながらの演奏は今も忘れられません。
終演後、何回も何回も一人出てきたベームの嬉しそうな笑顔も素敵でした。
今度DVD買います!
投稿: Kazu | 2006.12.23 02:34
Kazuさん、ようこそ。
ええ、ようやく買いました。
何せここ1ヶ月はあっちの方に集中してましたんで(笑)。
>上半身を大きく揺らせながらの演奏は今も忘れられません。
そうですね。音だけでも十分良いですが、映像付だとさらに楽しめます。
驚いたのが、当時まだベームは颯爽としてたこと。指揮台までの歩みなんてかくしゃくとしてます。もっとヨボヨボしてたような記憶だったので。
このあと2、3年で急に身体的に衰えてしまいましたが・・・・
とにかく、お勧めですので是非ご購入を!
投稿: Sato | 2006.12.23 10:40