ディラン新譜 / モダン・タイムズ
さて肝心の本編です。
全10曲、作詞・作曲はすべてディラン本人。プロデュースは、ジャック・フロスト、つまりディラン自身です。録音はほとんど一発録りでしょう。
外盤の限定版はブック状の紙ジャケで丁寧な作りです。
内側は、こんな感じでカッコいい。
米iTune Music Store のアルバムチャートではなんと第1位(8月4日現在)。日本では・・・・もちろん買えませんw
対訳が欲しいので国内盤を買おうかと思ったのですが、担当が中川五郎氏で、彼の訳詞は苦手なのでやめました。歌詞は、すでに Expecting Rain の他、ネット上の様々なサイトで入手できるし、そのうち dylan.com にも載るでしょう。
さて内容ですが。
現在のディランは、65歳の男です。66年のディランの声も、「地の轍」のディランの声も、もう望んでもありません。それに耐えられない人は失望を味わうでしょう(笑)。
驚くのは詩。
全10曲で、ざっと数えたら600行ほど。内容は、Oh Mercy あたりから目立ち始めた(と思いますが)、心の動きをシンプルに表現したものが目立ちます(もちろんそれだけではないです)。彼はもう、Idiot Wind のような曲は書かないでしょう。
冒頭で、全曲ディラン作と書きましたが、ちょっと不思議なことが一つ。
Rollin' and Tumblin' が3曲目に入ってて、あの独特のリフとリズムは、マディー・ウォーターズの曲とまったく同じです。まあ、ディラン様ならいいかと(オイオイ)。
ただし、歌詞がマディーのそれとは、まったく違います。
冒頭だけ比べると、
通常のRollin' and Tumblin'
Well, I woke up this morning, my biscuit rolling on.
Well now, come here baby, sit down on daddy's knee.
Well now, come here baby, sit down on daddy's knee.
I want to tell you about the way they treated me.
今回のディラン版
I rolled and I tumbled, I cried the whole night long
I rolled and I tumbled, I cried the whole night long
Woke up this mornin', I must have bet my money wrong
マディー版のエロ感漂うボヤキ風味?は影をひそめてます。全体の歌詞もディラン版は33行で、7行で終わるマディ版の4倍以上。冒頭のブルース風自虐感はちょっと似てますが(my biscuit rolling onはのぞく)、その後はディランワールド。
個人的に気に入ったのは、Workingman's Blues #2 で、曲名とは裏腹に、スローバラードで本当に美しい曲です。もう一つ上げるなら、Nettie Moore。
ラストの、Ain't Talkin に、Never Endling Tour の彼自身の姿がダブります。
まるで、Jack Frost の中を寡黙に歩き続ける男のようで。
Ain't talkin', just walkin'
Up the road, around the bend.
Heart burnin', still yearnin'
In the last outback at the world's end.
~ Ain't Talkin by Bob Dylan
Never Endling Tour で聴けるのはどの曲でしょう。
(追記)
「Nettie Moore って誰?」
どうも19世紀後半に歌われた、大衆歌の中に登場する人物のようです。
米議会図書館のサイト(The Library of Congress)にある、American Memory のところで Nettie Moore を検索すると、いくつか情報が出ます。
例えば、Gentle Nettie Moore なんて曲があり、当時出版された楽譜のスキャンも見れます。
検索サイトでも、American Sheet Music Nettie Moore で検索すると、結構ヒットします。
(Sheet Music というのは数ページの紙に譜面・歌詞が印刷されて出版された歌の俗称のようです)
ただ、Nettie Moore が実在の人物なのか、大衆のイメージの中で作り出された架空の「人物」なのかはよく分かりません。アメリカ人なら名前くらい聞いたことのある「人物」かも知れません。
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