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2012.05.18

グレッグ・オールマン自伝 その2

●この本、かなり面白いです。予想以上。タイトルの My Cross to Bear というのは「俺の背負う十字架」、「我が罪」みたいな意味ですか。

 驚いたのがロックやブルースはアメリカが本場だという強烈な自負心。

多くの英国人は自惚れていて、特に「ブリティッシュ・ブルース」についてそれが言える。彼らは「ブリティッシュ・ブルース」について話しかけてくるが、自分はそんなクソなもの(that shit)は聴きたいと思わないし、兄も嫌っていた。英国人のやるブルースは、大英帝国製造のブルースのようなもの、だ。ロックやブルースは最良のアメリカなのだ。ブリティッシュ・ブルースはグリーンランドにいるオウムみたいなものだ。

ってそこまで言うかい(笑)。そんなこと、クラプトンが聞いたらひっくり返りますぜ。他にも、グラハム・ナッシュは良い友人だけどホリーズの音楽は愚劣だと思ってた、とか、自分の気持ちを偽れないというか、正直な人なのでしょう。

Allmanjoys●60年代中盤のThe Allman Joys 時代(写真。PD)の回想の中に、デュアンがヤードバーズ時代のジミー・ペイジーとジェフ・ベックの大ファンだった(特にジェフ・ベック)とあり、クラプトンのことはまだ良く知らなかったそうです。ということは、Blues Breakers with Eric Clapton はまだ聴いてなかったということでしょう。デュアンはストーンズもよく聴いていたそうです。ってなんだ、英国ロック聴いてるじゃん、オールマン兄弟(笑)。

 リクエストが多かったので、Yesterday や Paperback Writer も演ったそうですが、彼らがそういう曲やってる姿はあまり想像できません。でも上の写真のように、ちゃんとマッシュルームカットなんですよね。一番よく演奏したビートルズの曲はリヴォルバーからの曲。リヴォルバーはビートルズのベスト・アルバムとグレッグは言ってます。

●ディッキー・ベッツとの決別について、アルコールが原因で荒れていくベッツの演奏に他のメンバーが耐えられなくなる様子がベッツ脱退のための仲裁手続での様子を含めて詳しく書かれてます。オールマンとした録音のカセットを持ってきて床にぶちまけて暴言吐く、仲裁手続でのベッツの振る舞いもかなり子どもじみてて、これじゃあ他のメンバーはうんざりするはず。実際ベッツ以外は今も一緒に活動してるわけで、グレッグは「今彼のことを考えても怒りの感情も何もない。もう終わったこと」とあっさり。たぶん彼らが一緒にやることはもうないんでしょう。

●Kindleのエンハンスト版にはグレッグのインタビュー映像が所々入っているのですが、これは自伝本編の文章には含まれていないものでした。こんな感じで再生されます。

Gregg_enhanced

 この部分ではアリーナやスタジアムのような大会場は嫌でビーコンやオーフィウム・シアター(ボストン)のような小さなホールが好きだ、と言ってます。理由はもちろん客との距離が近くて親密な交流ができるから。ステージ前に楽屋で聴くのは、マディ・ウォーターズ、レイ・チャールズ、ハウリン・ウルフ、ソニー・ボーイ、リトル・ミルトン、マーヴィン・ゲイ、ジョニー・ギター・ワトソン等。こてこてですね。iPodで聴いてるそうです。

 こちら、自伝のプロモーションのため、Conan O’Brien Show に出た時のグレッグ。

2012.05.02

グレッグ・オールマン自伝、My Cross to Bear が発売

Gregg_crosstobear●待望の自伝出ました。私は安いので米AmazonでKindle版を買いました。オーディオ・ビジュアルの仕掛のついたエンハンスト版で9ドルちょっと。本の冒頭には「母さんとデュアンに捧ぐ」とあります。

●先にRolling Stone 誌にほんの一部分が抜粋掲載されていて、案の定というか元妻のシェールがらみの場面だったので、世間の興味は結局それかいと苦笑。

 ただし、内容は赤裸々にシェールと出会った時のことを語っていて驚かされました。ビッチ女(失礼)に舞いあがってちんちんにされてる様子が笑えましたが、リムジン奮発して初デートに乗り込んだら「こんなクソ霊柩車で来んな」と小馬鹿にされたとか、よくぞこんなに覚えてるもんです。何十年前の女の子とのデートがどうだったかなんて私しゃ何も覚えてません。ははは。

●出たばかりなので、本当にさわりを飛ばし読みしただけです。有名すぎるレイラ録音時のクラプトンとのマイアミでの伝説的な出会い、デュアンの死あたり。

 後者で印象的なのが、デュアンの死が、彼を兄のように慕っていたベリー・オークリーにとっては人格を崩壊させるような衝撃的な出来事だったということ。

 オークリーがデュアンの死後アルコール漬けになっていく様子が書かれていて、オークリーの事故死は自暴自棄の自殺と捉えられても仕方ない旨のことが書かれてます(書き方自体はペンディングですが)。グレッグの言葉、I don't think he wanted to die; I just think he didn't want to live は、2人のお墓が兄弟のように寄り添うように並んでいることを思い出すとやはりジーンとしてしまいます。

●クラプトンとの件については、ABB40周年のバックステージでの話が短いですが感動的。
 レイラセッション時の話も当時者が語るだけあって重みを感じます。トム・ダウドがデュアンに、ドミノスのセッションを見に来れるか尋ねたときのクラプトンの反応は、グレッグによると、「見に来れるか?ヤツが来るなら弾かせるにきまってんだろ」だったそうで。

 クラプトンのバンドでプレイするデュアンをディッキー・ベッツは嫉妬の目で見ていたとグレッグは書いてますが、同時に、自分がギタープレイヤーだったら同じ気持ちになっただろうとも書いてます。

 かと思うと、デュアンの死後一時的にバンドをサポートしたレス・デュデク(ジェシカでアコギを弾いてる)のことには一言も触れられていません。

 あと、全体的にfuckという言葉が多いです(笑)。

●エンハンストの中身は、写真や音楽ファイル、グレッグのインタビュー動画などで、Statesboro Blues はフィルモア・イースト音源だし、あっと驚くようなレアなものはない感じです。というか、Kindle版はなんでオマケのあるエンハンスト版の方が通常版より安いんでしょうか?間違って通常版も買ってしまいましたが、文字部分の収録量は同じに見えるんですが。(追記:価格の逆転はプレオーダー時だけだったようです)

●公式サイトではグレッグの直筆サイン入り本も売り出されましたがあっという間に売り切れたそうです。グレッグ・オールマン級の大物なら当然邦訳を期待したいですが、最近の洋楽ニーズを考えるとどうでしょうねえ。

●電子版なんでいつでもスマホでちょっとずつ読めるので、ちびちび読みます。

2012.05.01

ニール・ヤング&クレイジー・ホースの Oh Susannah

●6月5日に出るニール・ヤング&クレイジー・ホースの新作ですが。公式サイトでプレオーダーすると、Oh Susannah 1曲だけ5月1日からFLACでダウンロードできるようになったので聴いてみました。

 というか、オフィシャル・ビデオも公開されました。先行ダウンロードの意味あまりないか。

 うーん、これはたまらんというか。真面目にやりなさいというか。「この人達とは遊んではいけません」オーラが漂いまくってますな、こりゃ。いや、たまりません。ていうかこのビデオ、幼児にタバコ吸わせるシーンが出てきますが大丈夫なんでしょうか・・・

 去年のブリッジ・スクール・ベネフィットでニールがデイブ・マシューズとやったバージョンとほぼ同じなのですが、ニールはこの曲をやるアイデアをどうやって思い付いたのでしょうか。

●Oh Susannah というと、中年以上の世代なら、小中学校で聞かされたはずの有名な「オー、スザンナ」(スティーブン・フォスター作)を思い浮かべると思うのですが、ニール・ヤング・サイト Thrasher's Wheat のブログ Neil Young News にAmericana のライナー解説を引用する形で、Oh Susannah という曲についての興味深い記事が出てました(と思ったら、その部分はなぜかもう消えてる。先走って怒られたか)。

 それによると、1848年に初演されたスティーブン・フォスターの曲 Oh Susannah には、

(1) 1963年にティム・ローズという人が新たなメロディーを付けて改作し、The Big Three というグループが演奏したもの
(2) 1964年にティム・ローズ自身によって彼のグループ Tim Rose and the thorns のために再度改作したもの(有名なショッキング・ブルーのヒット曲「ヴィーナス」の元ネタ)

があるそうです。私は全く知りませんでした。去年のブリッジでの Oh Susannah は(2)が元になったそうで、今回のホースとのヴァージョンの元でもあります。

●それにしても、「これってテイク1なんじゃないの」と思わせるような荒々しさ。この人達、普通じゃありません。

 この調子じゃ、同じくアメリカの古い歌が元になってる他の収録曲はいったいどんな風に料理されてるんだか激しく不安、もとい激しく期待せずにはいられません。Clementineとか。

●ちなみに、公式サイトでプレ・オーダーすると Lyric Book という小冊子が付いてくるそうです。どんな代物かわかりませんが。

2012.04.28

Levon Helm Band / Ramble at The Ryman (DVD)

●リヴォン・ヘルム・バンドの2008年9月のライブ。収録はナッシュヴィルのカントリー音楽の聖地ライマン・オーディトリアム。CDでも出ていてそちらはグラミー賞取ってますが、私の持ってるのはDVDだけです。

Ramble at the Ryman [DVD]
Ramble at the Ryman [DVD]

 リヴォン・ヘルム・バンドの演奏は、この5ヶ月前にMerle Festivalに出演した時のライブ音源が正式に発売されてますが(ここにちょっと書きました)、曲目はそれほどダブっていません。何より、リヴォン・ヘルムという人の晩年の活動が映像としてきちんと記録されたのは嬉しいです。

 収録より3年経った2011年のリリースですが、リヴォンの声はこの翌年にオールマンの結成40周年ビーコン公演にゲスト出演したときには不安定で、昨年はもう歌える限界という感じでした。

●出たときに買って1回さらっと見ただけだったのですが、あらためて見直してみました。

 アメリカのポピュラー音楽の伝統に根ざした、普通の素朴な音楽。リヴォンの声も当然病気後の声で往年の力強さはないです。リヴォンに思い入れのない人が見たら、爺さん率いる田舎バンドにしか見えないかもしれません。でも、こういう音楽こそ生き残る。ウィントン・マルサリスのようなインテリがやる頭でっかちな伝統回帰とは大違い。ここにそのまま伝統があるじゃないか、という感じ。別にウィントン嫌いじゃないですけど。

 Merle Fest盤でも聴けた Ann Lee なんて三重唱に楽器はラリーのフィドルだけという素朴さ。その後に続く Rag Mama Rag は、この歌がどんな根っこの上に出来た歌か完全に実感させます。

 Chest Fever の冒頭は、ザ・バンド好きにはガースのオルガン即興ソロでお馴染みですが、この盤のもいい感じ。見てない人もいると思うので内容は内緒にしておきます。

●Merle Fest盤同様リヴォンがすべてのヴォーカルを取るわけではなく、娘のエイミーやラリー・キャンベル、ブライアン・ミッチェルが歌う場面もあります。彼らは傑出した歌い手ではまったくないのでちょっと物足りない感じ。でも、最後に出てきて The Weight を歌うジョン・ハイアットの歌はやはり別格。流石です。

●Merle Festでも参加してたマンドリンのサム・ブッシュが途中から参加して、最後まで出ずっぱりで弾いてます。バックに徹していて目立つシーンは少しだけですが彼のマンドリン素晴らしいです。才人。

 他にハープ、ヴォーカルが聴けるリトル・サミー・デイヴィス(この翌月心臓発作で倒れてます)、シェリル・クロウがゲスト参加。シェリルはリヴォンと Evangeline をデュエットしてて歌詞の記憶が怪しいですが、まあご愛敬。バディ・ミラーもずっと出てますが自分はこの人のことよく知りません。

●4人のホーン隊の付く大編成ですが、本当に普通のシンプルな音楽。Back to Memphis ですらベースはアップライトです。

 これがグラミーというのはリヴォンに対する過剰リスペクトかなという気もしますが、もし自分がこの現場に居たら幸せな気分で帰ったと思うし、最後の The Weight では泣いたかもしれない。ステージ上の全員が本当に楽しそうで、かつてクラプトンが憧れた「ザ・バンド」というバンドの有り様を決めた核になったのはリヴォンだったのかも。

 ドラムを叩くリヴォンの姿は文句なしに格好よく、ライマンの雰囲気も良く伝わってきます。

Levonryman
(写真はDVDからのキャプチャ)

2012.04.20

リヴォン・ヘルム(1940-2012)

●ザ・バンドのドラマーを長年務め、近年はリヴォン・ヘルム・バンドを率いて活動していたリヴォン・ヘルムが、4月19日に病気のためNYの病院で亡くなりました。71歳でした。かつて活動を共にしたボブ・ディランがツアーで滞在中のブラジルから送った言葉はこちら

●2月に行われたヒューバート・サムリン追悼コンサートの出演者として伝えられながら出演をキャンセル。同時期に、彼の住むウッドストックで継続している Midnight Ramble セッションの出演を病気治療のためしばらく休むという告知を公式サイト上で見た時は、声帯、というより命を失いかける大病を患ったことのあるリヴォンに、こういうことも起こり得る、と覚悟はしていました。

●幸い、何度か来日して演奏、歌を聞かせてくれた彼は、日本での体験について、こんな言葉を残してます。


「日本の会場はどこも満員だった。その国の貨幣に、天皇や政治家ではなく稲の絵がついているのを知ったときから、日本を好きになるのがわかった。農民は、尊敬の対象であるといってもよかった。あの国の人たちは、何がいちばんたいせつなものなのか、それを知っている」
(「ザ・バンド軌跡」(菅野彰子訳、音楽之友社刊。原題 The Wheels on Fire by Levon Helm with Stephen Davis))


 ザ・バンドのメンバー中、唯一のアメリカ人。農家の子供として生まれたリヴォンらしい言葉ですよね。彼はまた、スタジオで作った最後の2作のアルバム、Dirt Farmer と Electric Dirt で、タイトルに「土」(dirt)という言葉を付けた人でもありました。

 声帯を失いかけるという大病に見舞われ、経済的な困難に見舞われながら、彼はドラムを叩き続け、歌い続けました。

●さよなら、リヴォン。あなたの歌が本当に好きでした。

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